竹内銃一郎のキノG語録

Fake2017.07.09

このところの猛暑と豪雨のW攻撃、たまりませんな。うっかり外に出られず、毎日家に引きこもり状態。ありがたいことに、お陰で「竹内集成」がⅣまで進んでしまった。その合間にTV鑑賞。あの佐村河内氏のその後を追ったドキュメンタリー映画、「Fake」を見る。

彼も引きこもり状態の日々を送っているようで。世間の目が怖い、ウザイということもあろうが、目がよく見えない、耳もよく聴こえないという肉体的な障害のためであるらしい。世間の注目を浴びていた当時、わたしはよくいる野次馬以上ではなかったが、時間が経過し、カメラに映し出された彼は、どこの誰だか知らなくても、こいつ誰? と大いなる関心の対象となる人物だった。しかし、映画としてはイマイチ。最後は、佐村河内の12分の新曲の演奏で締めくくられるのだが、監督の森達也が映画のラストを飾るに相応しい曲だと言っていたそれは、大仰に悲壮感を漂わせた、「進撃の巨人」のバックに流れそうな、一言でいえば通俗的なもの。佐村河内家の飼い猫がときどき意味ありげにクローズアップされるのも、この映画の通俗性を強調しているように思われた。結局のところ、佐村河内が抱える不可解ともいえる<内なる闇>には、フツーのインテリである森達也ではとても手に負えない奥行があると、こういうことだろう。

先週の日曜の夜、また「大鴉~」がNHK・BSで放映された。前回は「大鴉~」のあとに、こまつ座の「イーハトーボの劇列車」が放映されて、どんなものかと続けて見たのだが、アタマの5分くらいでもう腹いっぱいになり。今回は、「大鴉~」の前に、内野聖陽主演の「ハムレット」が放映されたのだが、これまた始まって10分と経たないうちに見続ける気持ちが萎えてしまって。一言で言えば、これまた大仰にして通俗。どっちが先だったのか、タレントの松居一代がYouTubeで流したらしい「彼女の告発」とほとんど同種の演技の羅列だったのだ。Fake? いや、喜怒哀楽の過剰な提示を演技だと思い込んでいるのだろう。全編に佐村河内の新曲を流せば、多分バッチリはまるような、お手軽なとしか言いようのないお芝居。

九州各地が豪雨に襲われ、被害にあった人たちがTVの取材に応えているのを見ると、家族と連絡がとれない、家が流された等々の、どう考えても悲惨な現状を、みな冷静に、適切な言葉を使って話している。微笑を浮かべているひとさえいた。誰も泣きわめいたりしていない。「ハムレット」の関係者諸兄は、こういう映像を見てどう思うのだろう? それが知りたい。

 

 

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