竹内銃一郎のキノG語録

まもなく九月。チケット予約はお早めに。2017.08.28

ようやく朝晩は涼しくなった。日中も日陰に身を置けば暑さもさほどではなく。久しぶりに東福寺までお散歩。境内の樹々の緑が心地よく。

本サイトのNEWSにもありますように、10月11月に上演される「竹内銃一郎集成Ⅰ・Ⅱ」のチケット予約の受付が始まりました。そこで、最初の「夢ノ旅路」に収められている4本の戯曲の紹介を以下に。

①東京物語
オカマのオリーブと革命家のブレーキ。同房の囚人であるふたりが夜な夜な語る脱獄の夢の行きつく先は ……? M・プイグの小説「蜘蛛女のキス」にインスパイアされて書かれた作品。
(1987年 「桃の会」にて初演)
②春なのに
中島みゆきの曲にインスパイアされて書かれた短編集「たしあたま」の中の一本。
卒業間近の大学生・秀樹の部屋に突如現れた、正体不明のアベック、初男と花。秀樹はまるで魅入られたようにふたりを歓待するが、しかし、その顛末は ……? 実際にあった事件をもとに妄想を膨らませて書かれた作品。
(1998年 「カメレオン会議」にて初演)
③満ちる
鬼才と呼ばれ、放蕩のかぎりを尽くした老映画監督・吉田健一と、いまは新進映画監督・小説家として注目を浴びている彼の娘・満ちるが、一緒に仕事をすることになり、小さな島の民宿でカンヅメとなる。愛と憎悪の間で揺れるふたりの関係は、果たして ……? いまは亡き名優、すまけいさんのために書き下ろした作品。
(2012年 「MODE」にて初演)
④眠レ巴里
借金苦にあえぐ姉妹、ノゾミとアキラ。ガスも水道も電気も電話も止められた部屋で、ふたりが見る夢は、希望は ……? 「あたま山心中」「東京大仏心中」とともに、竹内心中もの三部作の一本。「春なのに」同様、実際にあった「サラ金姉妹餓死事件」をもとに妄想を膨らませて書かれた。(1994年 「東京乾電池」にて初演)

自分で言うのもアレですが、テキストはうまくまとまっている。でも、実際の舞台をどうすればいいのか。稽古は来月末から始まるのだが、日に日に不安が募ってくる。参考にというのではないけれど、円生の落語「包丁」の録画を見る。ああ、なんという名人芸! 登場人物は三人。兄弟分の男ふたりと、兄貴分の奥さん。ふたりの男の素性ははっきり語られないが、おそらく定職を持たない遊び人だろう。久しぶりに会うふたり。尾羽打ち枯らした弟分から見ると、兄貴分の羽振りはいい。清元の師匠をやっている奥さんのお陰らしい。弟分がいまの窮状を訴えると、兄貴は、金になる話を持ち掛ける。いま家にひとりでいる女房を誘惑し、いざことに及ばんというところへ自分が登場、奥さんに「手前、亭主の顔に泥を塗るような真似しやがって」と啖呵を切り、奥さんを女郎屋にでも売り飛ばして、その金をふたりで山分けしよう、というのだ。兄貴分はよそに若い女を作っているのだ。ひどい話である。奥さんと弟分のシーンが秀逸。笑わせる。それにしても。女も含めて、いわゆる善良な市民とはほど遠い人物たちだが、その描写にまあリアリティがある、ある。こういう小悪党をこれほど見事に演じられる出来る芸人・俳優がいまのこの国にいったい何人いるだろう? いや、政治家等々には両手の指の数では足りないほどいそうだが。という話はさておき。

チケット予約は、キノG-7のサイトからも出来ますが、わたしのこのサイトの「リクエスト」からでも結構ですので、何卒よろしくお願いします。

 

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