竹内銃一郎のキノG語録

ブンブン鳥の唄2018.10.23

「今宵かぎりは …」。そう言えばJIS企画で再演した時に、すこし手を入れたなと思い出し、台本を探したが見つからず。台本はかさばるので基本、終わったら捨ててしまうことにしていて …。いや、捨ててもいいと思ったのは、ワープロのフロッピーにデータを入れてるからだと思い出し、探してみると、あったあった。出てきた出て来た。アレコレあったなかに懐かしいのも幾つか。懐かしく思ったのは、雑誌等に掲載されてないから、トンとお見限りだったからだ。もう十年以上前になるのか。近大の卒業生・麓さんから、ワープロのフロッピーに入ってるデータをPCのデータに変換できることを教えられ、それで一時期やっていたのだが、PCを変えたらもうそれが出来なくなって …。

狂言の茂山ブラザーズとやった、「BIRD・SHIT」と「怪談 木霊女房」を久しぶりに読む。中身はほとんど忘れていて、まるで新作を読むよう。思いのほか面白く、少し手を入れてたらアッという間に夜になり。両作ともに、狂言の演目からインスパイアされて書いたもので、前者は「梟」を、後者は「磁石」と「右近左近」をもとにしてとネットには書かれているが、その元ネタがどういうものであったか、全然思い出せない。

こんなに面白かったのかと驚かされたのが「ブンブン鳥合戦始末記・序章」。これは、さいたま芸術劇場の制作で連作していた「二十世紀グリム」シリーズの3本目、「あらたま」の中の一本。上記の2本も多分、上演時間が一時間ほどの短めの作品だが、こっちはさらに短く、多分上演時間20分ほどではなかったか。このシリーズは、わたしが自宅で開いていた「戯曲講座」の講座生諸君が、「グリム童話」をもとに書いた短編集で、その中の一本ということである。

「ブンブン鳥~」は、小学生の女の子、ケメ子とシロ美が、墓石のようなオブジェのような、大きな卵が置かれた公園(?)に毎日やって来て、ふたりでそれを温めている。なんのために? それがブンブン鳥の卵だからと、まあ、こんな話ですが。最後は、シロ美が歌うこんな唄で締めくくられる。

「わたしゃ空ゆくまっかな鳥よ 羽根は火を吐くレモン色 闇を切り裂き ひと声鳴けば 月も血染めの茜色

わたしゃ空ゆく気楽な鳥よ 行方定めぬ捨て身鳥 義理も人情もおさらばさらば 風を枕に夢を見る

わたしゃ空ゆく阿呆の鳥よ 歌を忘れたはぐれ鳥 愛も知らずに東へ西へ なにを求めて身を焦がす」

詩は苦手でほとんど書いたことのなかったわたしが、こんなんよお書かはりましたなあと、感心しきりです。

 

 

 

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