竹内銃一郎のキノG語録

変わる/変わらない2010.05.24

5/22(土) アル☆カンパニー「家の内臓」(作・演出 前田司郎)を見る。前田氏の芝居は以前一度見ている。性格は変えられるが、品格は変えられないといったのは、かの小津安二郎。なんでいきなりこんなことを書いたかというと、以前見た前田氏の芝居にいかにも下劣な品格の持ち主的俳優が出ていて、なんとそれが前田氏であったからだ。
アル☆カンパニーは、俳優の平田満氏と彼の奥さんでもある井上加奈子さんのユニット。平田さんは、その昔、つかこうへいの芝居で一世を風靡したひとだが、井上さんもつかさんの芝居に出ていたひと。
平田さんの芝居を初めて見たのは、もう30年ほども前になるのか、つかさんの「飛龍伝」。劇は、彼が敷いてあった蒲団を畳むところから始まったのだが、そのあまりに日常的な風景が劇的に見えてしまう仕掛けに驚嘆したものだった。日常的でありながら日常に堕さない、というのか。平田さんの俳優としての品格の高さが、それを可能にしていたのではなかったか。そう、平田さんはかってわたしのお気に入り俳優のひとりだったのだ。
が、久しぶりに見た平田さんの芝居は ……。演技のあまりの拙さにびっくり! 劇の冒頭、暗闇の中からふたりの男の話し声が聞えるのだが、その声の座りの悪さから、てっきり若い俳優がふたりやりとりしてるものだと思いきや、なんと片方は平田さん! 座りの悪い声とは、要するに素人っぽい、鍛えられていない声、ということですが。更に驚いてのは、平田さんの見た目が、20年以上も前に見た印象とほとんど変わっていないこと。とてもわたしと同じアラシク(?)とは思えない若さ。学生諸君によく、若さとバカさは同義語だというけれど、平田さんもウーン ……。
劇の内容についてはほとんど語るに足らず。退屈きわまりないお芝居でした。

一覧