竹内銃一郎のキノG語録

早川義夫の「赤色のワンピース」を聴き、研究室でひとり泣く2011.05.12

木田元の「反哲学入門」の中に、生死の境で自分はほんとにしょうもないことを考えていた、という記述があって。
急性膵炎で病院に運ばれたが、どういうわけか長時間ほったらかしにされ、七転八倒の痛み苦しみの中で、氏が考えていたのは、ああ、あの歌いい歌だったけど、とうとう覚えないでしまったな、ということで、あとから思い出してみると、どうやら「ふきのとう」というフォークデュオが唄っていた「白い冬」という歌だったようで…
というような文章を実は昨日も、正確にいえば今日の深夜ですが、書いたのだけど、今朝起きて読み直したら、こりゃマズイと思って削除したのです。
なぜか。本論は、野田秀樹が、震災のために数日中断していた公演を再開するにあたって、開演前、舞台上から観客に語った「再開の理由」が、新聞(朝日?)に全文掲載されたことも手伝って、さすが野田! とあちこちから称賛を浴びてる、と。噂には聞いていたその「声明」を昨日初めてわたしは目にして、思わずカッとなって、なにエラソーなことをこいてんだ、みたいな厭味たっぷりの批判を書いたわけです。
が、読み返してみると、なんか無責任で品のない野次みたいで、こっちの真意はこれじゃ伝わらないな、と思って。
このことについては改めてマジメに書くとして。
始めに戻ります。木田氏が生死の境で思い出した曲、そんなにいいんなら、もしかしたらドラボの次回作の挿入歌に使えるかもと思って、というのは、中年男の切ない恋の話なので古い楽曲がいいと思っているからですが、YouTubeで聴いてみたらさほどのことはなく、ついでだから、久しぶりに早川義夫でも聴いてみようと、まず「世界でいちばん美しいモノは」をピックアップ。ああ、やっぱりいいなあ。そう言えば「赤色のワンピース」もいい曲だったなあ。ホイ。ウッ! ピアノのイントロでグッときたと思う間もなく、歌声が聞こえてきた途端、なぜかはらはらと大粒の涙が。なぜ?「なにか哀しいことでもあったの?」と我と我が身に聞いてみたいところですが。場所は研究室。いやいや、学生にこんなとこ見られなくて、ヨカッタヨカッタ。
即座に、この曲を流してのダンスシーンを作ることに決定。この曲、6分以上ある。もつかな。

一覧