竹内銃一郎のキノG語録

老いの接近と、「さいごのきゅうか」の作品・概要2020.08.06

一週間ほど前から、夜は11時前後に就寝し朝は5時半前後に起床する、早寝早起きの生活スタイルに変えた。健康のため一週間50キロの<お散歩>を自らに課しているのだが、これまでのように、めっきり暑くなった今日この頃のお昼過ぎにそれは無理だからだ。

今朝は少々起床が遅れ、家を6時半頃に出て8時半頃に帰って来たのだが、ショッキングな事実が明らかになる。前述の50キロは、100メートルを1分で歩くことが前提になっている。この数字は現在使用の、5年前に購入した「万歩計」で計っているのだが、この器で歩いた距離を測るためには、歩幅の数字を入れなければならない。しかし、歩いた距離は歩幅×歩数だけで出るほど単純なものではない。歩幅50と歩幅60のひとが競いながら歩くと、必ず60センチが勝つわけではない。歩きのスピードがそこに関わってくるからである。なので、万歩計を購入した時に、自分の歩きのスピードを計り、そこから、1分で100メートル=歩幅75という数字がでて、それを器に書き入れたのだった。それが …!

最近、どうも歩く速度が遅くなっているのでは? と不安を抱かせる事例が連発されているのだ。去年の秋、梅小路公園前の七条通を歩いていると、両手に相当量を荷物を持った推定年齢58歳の女性が、スイとわたしを追い抜いて、瞬く間にわたしから遠ざかって行ったのだ。その時は、彼女はきっと昔、いや今でも、ハイレベルのスポーツ選手なのだろうと考えて、自らの動揺を抑えた。一週間ほど前には、やっぱりわたしをスイと追い抜いて行く、わたしとさほど年齢が変わらない(ように見えた)男性がいてショックを受けたが、よく見れば、身長が180ほどだったので、歩幅が違うのだと納得。しかし、2、3日前の朝、推定年齢36歳の女性がスイスイと追い抜いたので、負けるもンかと追いかけたのだが(ストーカーではありません)、やっぱり距離は広がるばかり。彼女の身長は推定160。この時やっと、わたしの歩く速度の衰えを自覚し、今朝、5メートル毎に他とは違う敷石が置かれている鴨川沿いの遊歩道で測定。結果はな、なんと100メートルを歩くのに、75~80秒もかかるようになっていたのだ。5年で20秒近く遅くなっている。ということは、年に4秒、密かに老いが近づいているということである。ああ …

以下は、来年1月に公演する「さいごのきゅか」のチラシに掲載予定の「作品・概要」の下書きです。

本作品は以下の4つのシーンにより構成されている。S1「幻影は市電に乗って旅をする」S2「皆殺しの天使」S3「銀河」S4「自由の幻想」。タイトルはいずれも、世界映画史の中でも格別の鬼才、L・ブニュエルの作品より借用。登場人物は、山々に囲まれた温泉地の有名旅館でリゾバ(=リゾート・バイト)として働く坂本とゆき、彼らと同じ宿泊施設に泊まっている「町おこし特派員」の岡田、リゾバを指揮する旅館のチーフ・神明寺、そして、岡田に恋する女子中学生・ほのかの計5名。また、かってこの地を舞台に作られたTVドラマ(特撮怪獣もの)の一部を、劇中劇として再現する(?)S3「銀河」にも、地球防衛隊員5名が登場する(演じるのは前述の5人)。

時は年末。大雪のため、宿泊施設に閉じ込められた坂本、ゆき、岡田が、その一室で、神明寺に命じられた「正月用の箸袋作り」に営々と取り組みながら、各々の辛い過去・現在、そして茫漠とした未来への不安と希望について、悲喜こもごもに語り合う。神明寺とほのかは、そんな3人の間に割って入って、トリックスター(道化)的役割を担って笑いを誘う。ただ座って言葉を交わすことに終始するという点では、S・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を、社会の下層で苦闘する人々の話という点では、M・ゴーリキーの「どん底」を想起される方もおられようが、芭蕉、一茶、子規等の俳句・短歌を台詞の中に組み入れた20分余のシーンがあるなど、これまであまり見たことのない「真新しい劇」であることは、ご覧になった誰もが感じるであろう作品となっている。

 

 

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