竹内銃一郎のキノG語録

「いちご大福姫」公演パンフ原稿2012.04.12

 変わる/変わらない
 わたしも昔は若かった。そんなはずはない、と反論するひとのために(いるのか?)、その証拠をお見せする。
 
   燃える思いを拳に込めて
 これは最初の劇団のキャッチコピー。30数年前のことです。若いですね、恥ずかしいですね。それから数年を経て。
 
   変わらないこと それは変わろうとする意志だ
 これは誰やらの詩の一節で、芝居の台詞として引用し、それを二度目の劇団のキャッチコピーに流用したもの。もしかしたら最後の「意志だ」のあとに、!! なんてのがついてたかもしれない。どっちにしたって熱い、熱すぎる。でも、若いというのはこういうことだとわたしは思う。健気だ。 
 先日、ある公演のアフター・トーク(最近はポストパフォーマンス・トークなどと言うらしいが。フン!)で、進行役(MCって言うのか?)を務めた旧知のY氏がわたしに、「ずいぶん作風が変わりましたね」と、幾分の皮肉と批判を込めて言うので、「20年以上もなにも変わらなかったら、バカでしょ」と応えたのだった。この国に限らず世の多くの人々は、この道一筋50年みたいな、<変わらないひと>には敬意を表する。掘り下げる=深い=偉いということだろう。けれども、とわたしは自己弁護する。掘り下げる、即ち、垂直に下りていくことと横に滑って行くのと、どこが違うのか、その距離が同じならそれらは等価ではないのか、と。いい加減、ひとっところに落ち着いたらどうだ? 大きなお世話です。前述の「燃える~」のあとにこんなフレーズが続きます。
    はるか遠くへ もっと向こうへ
 今回はわたしの孫みたいな若いひとたちに戯曲の執筆をお願いしました(水沼氏は除く)。互いの刺激になればという思いがあったからです。こっちは十分にいただきましたが、彼らの方は?
 本日はご来場、まことにありがとうございました。

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