竹内銃一郎のキノG語録

わたしが選んだ「現役映画監督ベスト11+3」2018.09.29

前回、「記憶の仕組みはどうなっているのか?」という自らに投げかけた疑問が、あっさり解けてしまった。ケン・ローチの名を知ったのは、多分、今世紀に入ってからだが、ロベール・エンリコは半世紀前から知っていたのだ。よく言われるように、古い記憶の方が鮮明なのである。なぜ? 脳の刻まれ方が、古ければ古いほどしっかりしてるってことかな? というわけで? 薄れゆく記憶を少しでも長く留めおくため、ここに「現役映画監督ベスト11」掲げておこう。年齢順に<わたし好みの>代表作とともに。

①クリント・イーストウッド(1930 USA生まれ)「許されざる者」(1992公開) ②ケン・ローチ(1936 イギリス)「エリックを探して」(2009) ③ペドロ・アルモドバル(1949 スペイン)「私が、生きる肌」(2011) ④コーエン兄弟(兄1954弟1957 USA)「ノーカントリー」(2007) ⑤アキ・カウリスマキ(1957 フィンランド)「ルアーブルの靴みがき」(2011) ⑥レオス・カラックス(1960 フランス)「汚れた血」(1984) ⑦ポン・ジュノ(1969 韓国)「殺人の追憶」(2003) ⑧ウェス・アンダーソン(1969 USA)「ムーンライズ・キングダム」(2012) ⑨ヨルゴス・ランティモス(1973 ギリシャ)「ロブスター」(2015) ⑩ミランダ・ジュライ(1974 USA)「ザ・フューチャー」(2010) ⑪城定秀夫(1975 日本)「悲しき玩具 伸子先生の気まぐれ」(2015)

特別枠(奇蹟の復活を待望する3人)①森﨑東(1927 日本)「黒木太郎の愛と冒険」(1977) ②ジャン・リュック・ゴダール(1930 フランス)「軽蔑」(1963) ③ヴィターリー・カネフスキー(1935 旧ソ連)「動くな、死ね、甦れ」(1989)

ここに挙げた監督たちには、共通点がある。イ)デヴュー以来今日に至るまで、絶えることなく秀作傑作を発表し続けていること。ロ)作品にたくまざるユーモアが漂っているところ。ハ)創作者としてのわたしに多大な刺激と影響をもたらした。例えば、アメリカ映画の巨匠といっていい、S・スピルバーグの作品は、観客としてのわたしを面白がらせてくれるが、作家としてのわたしが刺激を受けることはなく、W・アレンの作品はまったく笑えないのだ。W・ヴェンダース(1945 ドイツ)はかって大いに刺激を受けた監督だが、残念ながら「夢の涯てまでも」(1991)以降、コンスタントに撮り続けているものの、これという作品がない。特別枠の3人は、いずれもご高齢で、ゴダールとカネフスキーは長らく新作発表がなく、森崎氏は認知症であるらしい。長らくご無沙汰と言えば、「ミツバチのささやき」のV・エリセ(1940)、「りんご」のS・マフマルバフ(1980 イラン)。彼らの新作も心待ちにしているのだが。「ベスト11」に入れたL・カラックスも長らくご無沙汰組だが、「汚れた血」から受けた衝撃はまさに忘れようにも忘れられないものなので、彼を外すわけにはいかない。日本の監督は城定氏のみ。国際的な映画祭で何度か受賞している、園子温(1961)、是枝裕和(1962)は常に社会問題を取り合げる姿勢がわたしにはマスコミ受けを狙っているようでウザい。そして、かっては大ファンだった北野武(1947)。「3-4×10月」(1991)がピークで、「ソナチネ」(1993)以降はわたしの期待を裏切り続けた。やっぱり城定は外せない。なんたって(多分)ここに掲げた監督たちの作品を全部足しても追っつかないほどの量産作家だ(事実確認なし)。それでいて秀作多数なんだもの。

改めて断るまでもなく、上記はすべて<ウィキ調べ>によるもの。ネットって便利だなあ。それにしても。コーエン兄弟の弟とA・カウリスマキが同い年だったとは! アキさん、まだ若いんだからお願い、辞めないで。

 

 

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