竹内銃一郎のキノG語録

「映画芸術」2019日本映画ベスト10ワースト102020.02.05

河原町通にあるジュンク堂書店が今月で閉店になるらしい。うーん、次々と本屋が消えていく。時々、散歩がてらこの店に入ってざっと本棚の本を見て、以前にも書いたが、入口わきに80冊ほどの古本が置かれたコーナーを覗いて帰るのだが、いつも気になるのは、レジに並んでいる客の多くは高齢者であること。それを見るたびに、ほんとに若いひとは本なんか読まないってことを確認させられる。これも以前に書いたが、京都駅構内にある二軒の本屋はいずれも、店に入っていちばん目につきやすいところに置かれている本の多くは、高齢者を対象にしたもので占められている、樹木希林とか瀬戸内寂聴等の高齢者の著書か、あるいは、認知症がどうしたみたいな。

その中の一軒で、「2019年日本映画ベスト10ワースト10」と銘打った雑誌「映画芸術」をパラパラ立ち読みすると、去年の日本映画のベスト1は、なんと荒井晴彦氏がシナリオを書き監督もした「火口のふたり」! 荒井氏はこの雑誌の発行人兼編集長である、ちょっとカッコ悪くない? と思った、もちろん、ヤラセや投票者の荒井氏に対する忖度があったわけではないだろうけれど。ついでだからと、ウィキで「映画芸術」を検索してみると、2007年からのベスト10ワースト10が載っていて、オヤオヤ、荒井氏の2本目の監督作品「この国の空」も見事ベスト1になっている。うーん。年を追うごとにベスト10の顔ぶれがどんどんレベルダウンしていることに、さもありなんと思ったが、ワースト10の上位には常に、三谷幸喜、是枝裕和、山田洋次の名が並び、それに続くのが、北野武、松本人志であることにも大いに同感。

雑誌の終わりのところで、荒井氏と元・文科省官僚だった映画評論家の寺脇研が、最近公開された(といっても数か月前かと思われる)映画についてあれこれ語りあっていて、その冒頭で取り上げた「パラサイト~」について荒井氏は相当の酷評をかましているのだ。「(ソン家族は)なんで金持ちを殺さなきゃいけないわけ?」と言い、物語の持って行き方が素人ぽいと言うのである。なにを言ってンだろう? 金持ちの社長がソンを見て「臭い」と言いたげに顔をそむけたから、その寸前まで「無計画」だった彼は、だから刃を凶器(=狂気)にして犯行に及んだわけで。なにが分からないんだろう?

彼の「火口のふたり」はキネマ旬報でもベスト1になったらしいが、もうひとつ信じられない、というか、よく分らない。彼の監督作品2作「身も心も」「この国の空」は見ているが、わたくし的にはどちらもイマイチ、ワクワクしないし笑わせてもくれないし。あ、思い出した。彼は柄本さんと友達で、その関係で見に来たわたしの「風立ちぬ」を見終わったあと、柄本さんにかなりの酷評を伝えたらしいことを。ま、わたしとは好みが違うというか、早い話が、荒井氏にとってワクワクも笑いも不必要=邪魔なものなのでしょう。

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