竹内銃一郎のキノG語録

活動の記憶㉗  警官に逮捕され …⁈  苦闘の80年代後期2020.11.19

先週の金・土と、福井市へ。金曜日は、今年の12月に開かれる高校演劇中部大会に、福井県代表として出場する2校の指導を、土曜日は、福井県の高校10校が、「未来」をテーマにした15分の芝居を上演し、それをわたしが講評。いずれも退屈さは感じなかったが、やはり疲れて。それと、自らの記憶力の低下の著しさを改めて実感させられ、いささか気分が滅入る。日、月、火と京都から来た奥さんと金沢で過ごし、結構な気分転換に。火曜のお昼前に出かけた卯辰山公園の紅葉の美しさに度肝を抜かれる。

さて、前回の続き。前回書いたように、87年の3月に上演した「さんらいず、さんせっと」は、斜光社で上演した「夜空の口紅」の改訂版だが、久しぶりにそのチラシを見て、初演時の出演者が誰もいなくなっていたことに気づき、切ない気持ちに。初演で木場が演じた役は、第三エロチカにいた有薗(芳記)が。彼は、85年に流山児事務所の企画・制作で上演した「碧い彗星の~」に出演し、その後、彼はわたしと同じ埼玉の浦和に住んでいたこともあって親しくなり、その縁で客演をお願いしたのだ。情児がやった役を小林がやって、わたしがやったジャイアント・馬場は森川が、そして、彼に殺されるヒロインを森永ひとみが演じた。初演は、新宿・歌舞伎町のビルの屋上で上演したところから、再演も屋外でと考え、いったい誰がどういう経緯で実現させたのか、すっかり忘れてしまったけれど、池袋のサンシャインビルの4F広場を劇場にして上演。しかし、3月の末とはいえ、夜は肌寒く、1日だか2日だか雨も降って、集客に苦労惨憺。おまけに、広場の使用料は無料に近く、照明・音響のための電源もサンシャイン~側が用意してくれたのだが、客席の賃貸料が予想外の金額になり、劇団創設以来初めての大マイナス公演となって、いま考えてみると、この時の金銭面でのダメージの大きさも、翌年の劇団解散の一因になったのかもしれない。

これから約一か月後、4月29日から10月27日までの7カ月間(!)、桃の会の「東京物語」を上演。といっても、各月の月末2日間の連続上演だったのだけれど。こんな無謀な企画を進言したのは豊川だったが、可能にしていただいたのは、スズナリの制作を担当していた酒井さん。彼女には並々ならぬお世話になったが、なにがあったのか劇場を辞め、ヨーロッパのどこかに行かれて …。いまはどこでなにをされているのだろう? ご存じの方、教えていただきたいな。

この年の11~12月に、「伝染」と「迷宮」を連続上演。前者の正式タイトルは「泣きたい『ジャスミンおとこ』の夜 伝染」で、出演者は森永以下女性9人。若い頃から実在しない「ジャスミンおとこ」に恋し悩まされた統合失調症のウニカ・チュルンが書いた「自伝」(?)と、中島みゆきの名曲「泣きたい夜に」を下敷きに、いうなれば「女の一生」を描いた作品。劇冒頭の10分ほど、出演者全員がそれぞれの友人・恋人・家族に電話していて、皆の語りを重ねながら、それぞれが誰になにを語っているのかが分かるように書き演出をした。現在はもちろん過去にもこんな超絶技巧の芝居などなかったのでは? また、全員でグリム童話の「狼と七匹の子山羊」を台詞ナシで演じる場面もあり。これは楽しい芝居となった。数年後に東京乾電池の若手で、そのまた数年後にさいたま芸術劇場でも上演。

斜光社で上演した「SF・大畳談」の改訂版である後者の正式タイトルは、「バラバラ『百頭女』事件 迷宮」で、こちらは、女性ひとりのみ男性8人のおとこ芝居。「百頭女」は、シュル・レアリズムを代表する画家、マックス・エルンストの作品のタイトルである。おおまかなストーリーは「大畳談」をベースにしているが、確か、劇の後半に、これは現実の話ではなく映画の撮影現場であることが明らかにされ、岩本が演じた主役の男は幾度もミスを犯して何度も撮り直し、それを相手役の女優やスタッフが「やっぱりアングラ俳優は使えない」という意味の言葉で彼をなじるので、とうとう彼は堪忍袋の緒を切って、現場でいるみんなを次々と刀で切り倒し …という話に変わっていたはず。ところで、

あれはいつ頃だったのだろう? この芝居を翌年の夏に長野の松本で開催される「まつもと演劇祭」で上演することになり、その打ち合わせで(?)松本へ出かけたその帰り、新宿に着いた時には当時住んでいた北池袋までの電車がなくなっていて、持ってるお金も少なかったのだろう、歩いて北池袋まで帰ることに。テクテク高田馬場を過ぎた頃、道路沿いに自転車が一台、触れてみたらちゃんと動く。なのでそれにまたがり50~100メートル走ったところで、背後からパトカーがやって来て、「それ、おたくの自転車?」なんて問われた挙句に、「ちょっと目白の交番まで」とパトカーに乗せられて。当時のわたしは、公演ごとに新聞に掲載される<知る人ぞ知る>御仁だったので、これが世間に知られて<事件>になったら大変と、一滴も飲んでいないのに酔っ払いの大芝居をして、警官になにを聞かれても「ああ、うん …分からないス。スミマセン」を繰り返し、無罪放免を獲得。ふー。しかし、あの自転車は警察が仕掛けた罠だよな。だって、わたしが乗って1,2分後にやってきたのだもの。近くに潜んで見てたに違いないのだ。

 

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