竹内銃一郎のキノG語録

「光と、…」公演パンフ用原稿2011.03.25

竹内からのご挨拶
今回の上演テキストは、90年代に上演された2本の短編集、『光と、そしていくつかのもの』の中から5本、『たしあたま』の中から2本を抜き出し、本公演用に新たに構成し直した(リセットした)ものです。
前者は、水戸芸術館の専属劇団ACMのために書き下ろしたもので、オリジナル台本は全10景から成っており、P・クレーの絵画が発想の素。タイトルもクレーの絵画から採られています。この時の、いわゆる「鈴木(忠志)メソッド」で鍛え上げられた若い俳優諸君との共同作業はとても刺激的で(方法を共有した集団の底力!)、今でもわたしの大きな財産になっており、また、わたしの信頼する友人のひとりが見終わった直後、「これは竹内さんの最高傑作!」と、興奮気味に語っていたことも今では懐かしい思い出です。
後者は前者の翌年、「カメレオン会議」の旗揚げ公演のために書き下ろしたもので(というより、この作品の上演のために「カメレオン会議」を作ったのですが)、オリジナル台本は全8景から成っており、各景には中島みゆきの曲名がつけられています。8本のうち4本の台本は、松田正隆、桝野幸宏、角田智子が担当。俳優陣には、小日向文世、松尾スズキ、橋本じゅん、片桐はいり、広岡由里子、中村久美等々、いまでも映像や舞台の第一線で活躍を続けている芸達者が揃い、これまたわたしにとっては思い出深い作品です。(因みに、「たしあたま」は、わたしが子供のころに見たTVドラマの中で繰り返し使われていたことばで、みゆきさんの歌曲とは直接の関係はありません)
早いもので、DRY BONESも結成から3年目を迎えましたが、前回公演で、プレ旗揚げ公演に出演したメンバーの全員が、卒業・就活等のため退団し(と思ったら、退団していた佐藤愛子がなにを血迷ったか今回から復帰!)、本公演はいわば第二期ドラボの旗揚げ公演という位置づけで、タイトルの「RESET」には、そういった意味合いも含まれています。更にもうひとつ。3月11日に起きた東北関東大震災は、60余年も生きてきたわたしにとっておそらく「生涯最大の事件」で、それは単に災害の大きさゆえではなく、これがつきつける諸問題の大きさ重さ深さが、作家としてのわたしの容量をはるかに超えるものであるように思えるからです。偶然とは言え、「RESET」はわたし自身に投げかけられた、厳しい言葉でもあります。わたしのこれまでの作家活動のすべてをご破算にし、ゼロからもう一度始める勇気と覚悟がなければ、今後なにも生み出しえないだろうという危機感 ……
蛇足ながら、本作品の最終景「哀しい子供たちの踊り」は、被災された人々、とりわけ亡くなられた人々に捧げられていることを付記して。
本日はご来場、まことにありがとうございました。

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