竹内銃一郎のキノG語録

ラインナップ 日経「わたしの読書日記」連載5回分2011.04.05

日経からの依頼原稿「わたしの読書日記」連載5回分、ようやく書き上げる。フー。現在購入可能なら、どんな本を取り上げてもいいが、なるべくバラエティーにとんだ5册を選んでほしい、という注文。あれこれ考え、以下のラインナップに決定。
①金子光晴「どくろ盃/ ねむれ巴里」②上野千鶴子「セクシィ・ギャルの大研究」③前田英樹「ソクーロフとの対話」④加藤典洋「言語表現法講義」⑤久米裕「血統クラシックロード」
選んだ理由
①は、わたしがもっとも衝撃を受けたもの。②は、演技演劇を考えるうえで、ヒントになったもの。③は、ふたりの真摯な対話に感銘を受けたから。④は、これを素材に、大学でのわたしのことを書けたらな、と。⑤は、週末には必ず手にする我が最高の愛読書だから。
1回分、11字×50行という厳密な文字制限が心地よく、3回分まではサクサク書けたのですが、大震災の到来で様相は一変。紙面変更で連載は一時休止。再開はいつになるか分からないが、残りは必ず掲載しますと、担当者から連絡が入る。中ぶらりんな感じもさることながら、さすがに競馬のことは書けないし、と思ったら、ノリノリ気分も一気に失せて。
再開決定の連絡あって、さてどうしたものかと改めて考える。まず候補にあげたのは、解剖学者の三木成夫の「胎児の世界」。地球のあらゆる生物は海から生まれたという事実と津波被害のことをリンクして書けないかと思ったのだが、うまくまとまらない。
そこで取り上げたのが、柴崎友香の小説「その街は今は」。なぜか。わたしは、絶えることなく、あちこちから聞こえてくるガンバローコールにいま苛立っていて、その対極にある言葉はないかと考え、これに行き着いたのだ。
ウザクないですか、明日を信じて、とか。言ってる当人たちが自らの善意を信じて疑わない風なのが、わたしは許せないのだ。このことについては改めて書こうと思っていますが。
4回目分は、今週木曜の夕刊に掲載されるはずです。
5回目はなにを?それは読んでのお楽しみ、ということで。

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