竹内銃一郎のキノG語録

職人の仕事2011.08.03

今朝、小阪のわが邸宅に、業者がクーラーの取付に来た。
最初に30代半ばと思われる兄ちゃんが来て、少し遅れてわたしと同年輩のおじさんが登場。年齢はもちろん、その風情から当然このひとが親方だろうと思いきや、若い方が、「違う違う」と結構きつい口調でダメ出しをしている。うん[e:3]おっさんはバイトか[e:3]と思ったら、若い方、おっさんを店長と呼んだ。どういうことだ[e:3]3分ほどでこの不可解な謎が解けた。二人は親子だったのだ。いや、真実かどうかは分からない。彼らの仕事が終わったら聞こうかとも思ったが、人見知りのわたしにそんなこと、出来ようはずがありません。
小一時間ほどかかったその作業をじっくり観察。この間、ふたりが交わした言葉は多分10コほど。主役を息子にまかせた親父の脇役ぶりに感心する。ゴミなど出るとすぐに片付ける。1秒たりとも休むことがない。彼らの仕事ぶり、学生諸君に見せたかった。舞台の仕込みやバラシの時なんて、時間の半分くらいはボーっと立ち尽くしてる彼らに。
ま、踏んでる場数が違うわけだから比較するのも酷な話だが…
なんにせよ、無駄のない動きは美しいもので、わたしが今朝の二人の息子だったら、文句なくわが父親を尊敬するだろう。
そんなわけで、他人を汚い部屋に上げるわけにもいかず、昨日の夜、久しぶりに掃除をしつつNHKのニュースを見、そのままにしていたらドラマが始まった。わたしはもう何十年も、テレビドラマをちゃんと最初から終わりまで見たことがない。なぜ? 面白くないから。
やっていたのは、向田邦子原作「胡桃の部屋」。あまりのことに驚く。
出て来る俳優出て来る俳優、チョー下手。竹下景子、ほんとにひどい。顔で説明し、物言いで更に念押し。他は推して知るべし。ネプチューンの原田なんて、ダメな素人以外ではない。
でも、結局演出家なんでしょう、ほんとにダメなのは。原作の古さばかりが目立って。 原作の忠実な再現がコンセプトだ? バカ言ってんじゃないよ、やんなきゃいけないのは、いまこれをどう読むのかって、その提示であり表明だろ。 いろいろ問題はあれ、やっぱり和田勉だの久世光彦だのは、ちゃんと職人の仕事はしてたよなあ、と思った。
さすがに話の作りに瑕疵はなく、この先どうなるんだろうと気にはなったが、どうにも我慢が出来ず、結局10分ほどでチャンネルを変えてしまいました、とさ。

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