竹内銃一郎のキノG語録

眠くないのか! どれもが素人芝居で …2011.11.17

なんだか知らないがベラボーに忙しい。
週末の競馬をカットすればもう少し仕事に時間を割けるのだが、そうはいかない。
依存症なのだ!!
それにしてもエリザベス女王杯を2連覇したスノーフェアリーは凄かった。まるで去年の再現。テレビ画面にほとんど映らず、実況アナもほとんどその名を呼ばず、ゴール寸前になって、「勝ったのは、勝ったのはスノーフェアリー!」だもの。
最後の凄い末脚を誰が言ったか「鬼脚」と表現するが、そんなもんじゃない。ゴール寸前、まるで異空間から突然現れたみたいにやって来るのだ。目にもとまらない!
目にもとまらぬと言えば座頭市の居合い抜きだが、WOWOWでその「座頭市」の全巻連続上映が始まっている。土・日48時間のうちの30時間ほどを競馬に費やし、おまけにこんなものにまで律儀につき合っているから、まあ、ベラボーに忙しいと思ってしまうのだが。
カツシンの「座頭市」はほとんど全部見てるはずだが、忘れてしまっているのもあって、先日放映された「喧嘩旅」は傑作だった。「血笑旅」はいちばんのおすすめ。ひょんなことから赤ん坊を父親のところへ届けなければいけなくなる。「市」の弱点はもちろん目の見えないことだが、それに「赤ん坊」というお荷物を背負うことになり、殺し屋どもに付け狙われている「市」はそのため、たびたびピンチに陥ることになり ……。シナリオがうまく出来てる。古いアメリカ映画がもしかしたらネタ元になっているのかもしれない。相手役の、女スリを演じる高千穂ちずるがいい。何を隠そう、わたしは子供の頃、このひとの子供になりたいと思っていたのだあ!
監督三隅研次の凄腕は誰もが知っている。でも、彼だけじゃない。大映京都でいわゆる娯楽映画を撮り続けていた監督たち、安田公義、田中徳三、池広一夫、森一生、みんな確かな腕の冴えを見せていた。だから、他のシリーズ物、「眠狂四郎」「悪名」等々、どれを見たって退屈することはない。
またいつもの話だが。
このところの金土日、いろんな事情があってほとんど芝居を見てる、というか見なければならない羽目に陥ってる。どれも見事に詰まらない。
10年ほど前に亡くなった弟は、わたしの芝居を一度も見たことがなかった。誘うと、「どうせ素人芝居だろ」と言うのだった。
最近見た7、8本のすべて、弟なら間違いなく、「けっ、素人芝居が高い金とって」と言うだろう。
もちろん、どれも、出ている俳優もホン書きも演出家も、名だたるひとが関わってるものばかりです。
でもね、先に記した映画を基準にすると、やっぱり素人芝居と言わざるをえない。
具体的な固有名詞は明らかにしないが、お祖父ちゃんが人間国宝だった俳優がふたりも出演してる芝居もあって、別に期待はしていなかったが、まあ、ヒドイ。パンフレットに座長格の俳優が、「ゆるい稽古場でとても楽しい」みたいなことを書いていて。もしかしたら、退屈な芝居であることが分かってて、それでこういう形でエクスキューズしているのかもしれぬが。ゆるいというより作りが雑なんですよ。ホンからなにから。
でも、まあ、客がよく笑う。箸が転がっても笑う年頃でもないのに。笑い屋を仕込んだのでなければ、不景気風などどこ吹く風の幸せ者たちが結集したのか、そうでなければ、みんな気が狂ってる、そうとしか思えない。
中では、この日曜に見た(聴いた?)志ん輔の落語はまっとうなもので、3000円の入場料は芝居の値段を考えるとベラボーに安い。
久しぶりに生落語に接して、いろんなことを考えたが、それは改めて。

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