竹内銃一郎のキノG語録

兵庫県高校演劇大会審査を終えて あの若い才能はいまどこで何を?2011.11.21

先週末は、兵庫県の高校演劇大会の審査にあたっていた。
3日間で15本!さすがに疲れはてた。にもかかわらず、ほとんど寝なかった自分を褒めてやりたい。ほとんどというのは、少しは寝たと言うことですが。合計5分くらい。この一ヶ月ほどの間に見たおよそプロとは呼べぬ大人の芝居の10本ほど、残らずガッツリ眠ったわたしがですよっ。
世の中には、過剰に高校演劇を持ち上げるひとがいて、逆に、必要以上におとしめるひとがいる。言うまでもなく、どちらも愚かしい。
今日は昼休みから6時まで、びっしり学生たちの書いた戯曲の個人指導。マンツーマンで8人相手にずっと喋りっ放し。
ひとりの学生と指導のあと雑談をしていたら、彼女は、兵庫県の西宮今津高校演劇部員だったというので、3年前に凄い芝居を作った先輩を知ってるかと聞くと、入学・卒業で入れ違いになったが、知っていると言う。
その<凄い>芝居は、天皇制批判を含んだ内容もさることながら、いわゆる王朝もので、オリジナルの衣裳といい、その演技スタイルといい、高校演劇のフレームからは大きく外れた異色作だった。
しかし彼女から、大会後、兵庫の代表として、他県の作品とともに、京都の春秋座で上演された際、「京都のひとたちから散々な非難を浴びたって、先輩から聞きました」と言う話を聞いて、ひとごとなのに、竹内カッとなるの巻。
誰なんだ、そんな心ない輩は!
確かにわたしも、作中で語られる歴史観に甘さと危うさを感じて、多分そこを突かれたのではと推測するが、もしかしたらこういう言い方は、異色の作り手には失礼かも知れないが、賢しらに子供の粗探しをして、何が面白い? 明らかに才能を感じさせる若い芽を摘むようなことで誰が得をする?
大体京都に、あのレベルの芝居を作れる<大したタマ>がいったい何人いるのだ。
彼は多分、もう4年生になってるはずで、卒業後も芝居を続けるのかどうか、それはもちろん知らない。もしもその時の心ない非難に気持ちが折れてしまったのなら、それだけの才能だったということであろうし、あるいは、そんなバカが蔓延る業界に身を置くのは真っ平だと足を洗うのであれば、それはそれで見上げた見識と言えよう。
今年の兵庫県大会でも、何本か心に残る作品があり、とりわけ、洲本実業高校の作品には、不覚にも(?)涙を流してしまったが、詳しくはまた改めて。

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