竹内銃一郎のキノG語録

「リアル」の違い  「地球外生命 われわれは孤独か」(岩波新書)を読む2014.11.27

タイトルには「読む」とあるが、「読む」が「理解する」という意味なら、読んでいないことになる。あと5回くらい読まないと多分、分からない。知らない単語が次から次に出てくる。そして、その種の単語のほとんどはカタカナで書かれているので、カタカタに反発するらしいわたしの頭に入らない、等々の事情もあるのだが、理解を難しくしている最大の理由・原因は、おそらく筆者たち(長沼毅と井田茂)にとってはフツーのこと、リアルなものとしてある世界像が、わたしにとっては想像の範囲をはるかに超えたものであることだろう。

最初の方に面白い数字が示されている。地球の陸上と海に住んでいる生物を重さで比べているのだ。植物が1~2兆トン、動物は100億に近い数十億トン、微生物は2~3千億トン。動物の中の人間は、人口70億人、ひとり50キロ平均とすると3.5億トン。ひとつの生物種でこの重量は、家畜動物を除けば、地球生物史上なかったかもしれないらしい。その家畜の総重量が20億トンくらい。ということは、人間+家畜で全動物の四分の一ほどを占めているわけだが、微生物の重さが人間の1000倍以上もあるというのは驚きだ。

その微生物のバクテリアの大きさの平均は、1マイクロミリ、つまり1000分の1ミリ。そんな人間の裸眼ではとうてい見えない大きさのものが、合わせると地球上には2~3千億トンもいて、更に、地底にも400億トン! 更に更に驚くべき数字が。人体には腸内細菌を筆頭に約100兆コいて、一人分の腸内細菌をかき集めると1.5グラムになるという。

一方で。地球外知的生命との交信を図って電波信号を送っているらしく、そのターゲット(生命体の存在が想定しうる星)のひとつが、地球から22光年(因みに、1光年は約9兆4600億キロ!)のところにあるグリーゼ667Ccという太陽系外惑星で、仮に、この星に知的生命体がいて、地球からの信号をキャッチしてすぐ返事を出せば、44年でそれがこちらに届く、というようなことも書かれてあって。

ああ、アタマがクラクラする。つまり、著者たちというか、こういう研究に携わっている人々の頭には少なくとも、0.0001ミリから9兆4600億×22キロまでの世界が「リアルなもの」として納まっているのだ。

 

テレビで「千と千尋の神隠し」を見る。今回初見。最初にテレビ放映された時の視聴率は、なんと50%に迫るほどであったらしい。まさに国民映画だ。ということは、これまで一度も接することのなかったわたしは、やっぱり「非国民」?

作品は、観客を飽きさせない工夫が凝らされていて、そのことに感心したが、「所詮、絵が動いてるだけ」というわたしのクールな(?)眼差しが、過度の思い入れを拒んでしまう。これは、まっとうな教訓と時代への警鐘を含んだ、極めてオーソドックスな少女の成長物語だと思われるが、しかし、トンネルを抜けて「向こうの世界」へ行く前の千尋が、いったいどういう女の子だったのかがもうひとつはっきりしないので、なにがどう変り成長したのかが、もうひとつはっきりしない。また、物語の構造、登場人物たち(?)の形象が、精神分析的見地からの理解と謎解きを要請しているようで、それもイヤ~な感じがした。

ボン・ジュノの「スノーピアサー」にも触れておこう。地球温暖化による危機を回避するために、世界的プロジェクトのもと、冷却化する薬を散布したところ、その度が過ぎて地球全体が雪と氷で被われてしまった。そこでひとりの男が立ち上がり(?)、現代版ノアの方舟として、長い長い弾丸列車を作って人々をそこに乗り込ませ(他の動物は食肉以外に画面には登場しなかった)、そして17年経過。いまなお世界は雪と氷に閉ざされ、列車は走り続けている。物語は、その列車の最後尾に押し込められた最下層の人々の反乱=革命の企てが、成功するか否かを骨子としている。のですが …

長くなったので、以下は次回に。

 

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