子どもに見せたい 「座頭市の歌が聞こえる」2012.01.15
映画(館)が学校にたとえられることはあっても、芝居や小説はそのようには言われない。
なぜだろう[e:3]
教会の絵画やステンドグラスは、文字を読めない、つまり、聖書が読めない信者のためのものらしい。
文字で見せられたり、直接語られてもうまく理解が出来ないことも、図象化されるとよく分かるのだ。
則ち、この世の難しいことはよく分からない子供たちは、映画によって、大人の世界(の理屈)を知ったのだ。
子供の頃、子供用に作られた映画を詰まらないと思ったのは、だから当たり前なのだ。だって知りたいのは大人の世界(の理屈)なのだから。
座頭市シリーズは、そんな教育的見地に立つと、まさにもっとも子供に見せたい映画ということになる。
先日見た「座頭市の歌が聞こえる」は傑作。高岩肇のホンがうまく出来てる。
同じ盲目の琵琶法師に、お前(座頭市)はめくらの社会からも、目明きの社会からも疎外された化け物だと語らせ、小川真由美演じる女郎に、身を落としてもなお捨られぬ切ない恋情を語らせる。
少年少女諸君、生きるということはこういうことなのだ。
カメラはあの名人、宮川一夫。ラストのチャンバラは、<アメリカの夜>のなか、シルエットにして見せる[e:2]
このチャンバラがまたいい。座頭市は耳を封じてしまえば力は半減するはずと、悪党どもは太鼓を叩ながら、攻撃するのだ。冴えてますな。音楽に伊福部昭、美術に西岡善信と一流どころを配し、監督の田中徳三の演出も手堅い。とりわけラスト。座頭市がお約束通り悪党どもをやっつけたあとの、主な登場人物たちを丁寧にフォローしていて心にしみる。
これが映画だ[e:734]