七輪を持った小太りの女 橋本治の新刊を読む2012.08.22
久しぶりに橋本治の新刊を読む。新書だ。うん? タイトルを忘れてしまった。「それはこれからどうなる?」
? 違うな。ま、内容はそんな、いろんな世の中の事象を取り上げて、なんでこういうことになってんだろう、というものですが。
「七輪を持った…」は、もちろんかの木嶋女史のこと。週刊誌などはしばらく彼女の本名を伏せて、こういう形容句を使ってたなんて橋本は書いてんだけど、わたしは知らない。絶妙なネーミング。これは橋本のオリジナルではないのか。橋本もわたしと同様、彼女は言うほどブスじゃないと書き、この認識を前提にして、現代の女性は誰もが自分を美人だと思っていて、それは美人の基準などどこにもないことに気づき、美人とは要するに「権利」であることに、つまり、自分は美人だといえば<誰でも美人になれる>ということに気づいたからだと書く。更に、この国には政治・経済・芸術等々、すべてにおいて基準というものがなくなってしまったのだ、と話は広がる。
なるほどとわたしは頷いた。
頷いたのだけれど、この論理展開にはもうひとつ、これまでのような粘着性がないなと違和感をもった。これまでは執拗な繰り返しにうんざりし、アクロバティックな論理の飛躍についていけず、面倒臭いなと思いながら何度も読み返していたのに、今度の本はあっと言う間に読了してしまったのだ。所要時間約3時間。どうしたことか?
あとがきを読んで納得。体の具合がよくないらしい。病名は明らかにされてないけれど。ショック。彼はわたしよりひとつ若いのに。そんなわけで仕事もままならず、生活苦が押し寄せていて、だからこれは無理して書いた、という件を読み、更にショック。生活苦という言葉はオーバーにしても、まさかギャグではあるまい。橋本氏は、優に100を超える点数の著書を持っている、質量ともに特筆すべき、この国を代表する大作家だ。それが2年3年、仕事をしてないからといって生活苦とは!! 印税が入ってるんじゃないの? だって100冊以上の本を出してるんですよ。うーん。売れてないのかな。1年生の授業で彼の文章を取り上げた際、「橋本治って知ってる?」って聞いたら、誰も知らなかったからな。
今更だけど、世も末だ。