竹内銃一郎のキノG語録

変化、破壊、成熟  雑誌「Number イチロー主義」を読む。2015.04.17

一ヶ月ほど前だったか、名も知らぬ女性のモノ書きが「スポーツ選手はみんなバカ?」と言ったか書いたかしたことが、ヤフー・ニュースに載っていた。中身を読んでいないので、これがどういう文脈の中に置かれているのかを知らないが、おそらく、名をなしたスポーツ選手がTVのクイズ番組等で、頓珍漢なことを言ったりやったりしていることをもってそのように断じたのだろう。なんという浅はかさ。プロアマ問わず、彼等は一流のショーマンなのだから、おバカぶりはサービスであるやも知れず、たとえ、99が満足に出来なかったとしても、彼・彼女はその道を究めたひとである。そもそも、われわれのような凡人を計る物差しで彼らをどうこう言うのが間違っている。

久しぶりにNumberを読む。110頁中イチロー関連の記事が38頁! その中でも、目玉になっている1時間半を超えたらしいインタヴューは、至言の連続で読み応え十分。ま、インタヴュアーで、記事をまとめたと思われる石田雄太の腕も手伝ってはいるのだろうが。以下は、わたしが「ごもっとも」と頷いた、今回のインタヴューでの彼の発言。

破壊を経ないと成熟しないんじゃないか。

僕は変わることがまったく、怖くない。(中略)むしろそこに停滞していることのほうが怖い。だって形が決まるということは、自分の中でこれ以上ないということにつながりますから …そんなことはありえないんです。バッティングは永遠に終わらない。

(メジャーが40歳定年制を布いているかに見えることに、虚しさ、理不尽さを感じているのではないか。という質問に対して)虚しさなんて、しょっちゅ感じています。でもそれこそが、成熟への道じゃないですか。

以下は「年表」にまとめられた、彼のかっての発言。

「感覚だけでは長続きしない」「準備というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していくこと」(2002 理屈を追い求める理由を問われて)

「怖さを知ったら、いちいち満足感に浸ってなどいられなくなる」(2005 昔と比べてプレー中の笑顔が減ったのは?)

「選手の年齢は、精神的脂肪に出る。脳みその硬さですよね」「一番になりたい。『オンリーワンがいい』なんて言ってる甘いやつが大嫌い」(2008)

「言葉とは『何を言うか』ではなく、『誰が言うか』に尽きる。その『誰が』に値する生き方をしたい」(2013)

「まだ平均寿命までは39年くらいある」(2015)

これらの発言を読んで、「ポジティヴ過ぎてついていけない」と反発される方もおられるかも知れませんが、クール! そこがイチローの素晴らしいところ。物事を前向きに考えられない人間は、こういう場所(メジャー)にいてはいけない、という意味のことを言っている。同感。

 

 

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