竹内銃一郎のキノG語録

「じゅんちゃん …」  京都のホテルで亀井亨の「question」を見る2010.06.16

先週木曜、久しぶりに京都へ。水沼先生演出の「授業」を見に行ったのだけれど、この芝居についてはいつか改めて書くことにして。
終わって夜遅く大阪に戻るのも面倒で、翌日東京へ帰る予定もあったので、京都のホテル泊。そこで、思わぬ収穫が。
ホテルのテレビで見た映画「question」に出ていた水元ゆうなという女優さんが素晴らしかったのだ。
この映画の監督、亀井亨は、近年の日本映画の中で、わたしがもっとも刺激を受けた「テレビばかり見てると馬鹿になる」を撮ったひと。
「テレビ……」の主演、穂花も目を見張らせる存在感を見せていたが、この映画の水元ゆうなも抜群。少しハスキーな声がたまらない。彼女が「じゅんちゃん」と亭主の名を呼ぶたび、わたしの背筋を快感が走った。
少々文学的な画作りと筋立てが気にならないわけではないが、女優さんを魅力的に撮れる監督は本物。そうだ、「病葉流れて」の吉野紗香も悪くなかった。
翌日、新幹線に乗るまで少し時間があったので、フランソワへ。ここは古い喫茶店。 もう四半世紀も前になるのか。山中貞雄をモデルにした映画のシナリオハンティングのためにここを取材し、それ以来、京都に来て時間があれば必ず来ることにしている。
筋向いの「鳴瀬」も健在。この2店はともに、その昔、当時の京都の若い映画人のシナリオ創作集団「鳴滝組」が溜まり場としていたところ。山中もそのメンバーのひとり。とりたてて鳴滝組に思い入れがあるわけではないけれど、なぜかここはわたしのもっとも「懐かしい場所」になっている。
話は元に戻る。学生の中には、わたしのことを「じゅうちゃん」と呼ぶ不届きな連中がいることをわたしは知っている。ハッキリ言う。わたしは焼肉じゃなーい!
「じゅんちゃん」ならよい。わたしはその昔、「純一郎」というペンネームを使っていたのだ。水元さんの声に過剰に反応してしまったのは、多分そのため。
水元さんに直接、「じゅんちゃん」と呼ばれたい。それがいまのわたしの「のぞむもの」。

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