竹内銃一郎のキノG語録

一年のうち数ヶ月しか練習しないサッカー選手なんているだろうか?2010.06.17

サッカーにさほどの興味があるわけではないが、時々テレビで見てしまう。
今回のWカップ中継は、俯瞰のひき絵が多用されている。これが素晴らしい。ピッチの緑の上を、白・赤・黄・青等々が動くさまがとてもきれいだ。驚くべきは、敵と味方に分かれているはずの22人が、フルタイム動きっぱなしなのは言うまでもないが、まるでひとつの運動体のように見えること。
要するに、これは現代サッカーの方法が出場選手のすべてに共有されている証しだ。もちろん、個々の技量差や戦術・フォーメーションの違いはあっても、根本のところで共有されているモノがあるのだ。
芝居もあんな風に出来たらと思う。ひとつの運動体のように見えて、なおかつ個々の技量が際立つような芝居。
しかし、この国の大半の芝居の大半の俳優は、舞台上で過ごす大半の時間を休養に充てている。そのようにしか見えない。台詞を言う俳優だけが動いて(それも不必要に!)、他の俳優は自分の台詞が来るまでスイッチ・オフ! およそ運動体とは対極にある代物だ。いざ動けば、これがわたしの個性だといわんばかりに、個々が勝手に動いてる。その無様さ!
方法の共有どころか、そんな意識さえない上に、稽古の絶対量が足りないのだから、なにをか言わんやだ。
芝居を続けているわたしの専攻の卒業生に、日常的に稽古してる? と聞くと、大半は、というより全員が、公演の二ヶ月前くらいからしか…と答える。なぜ? と聞けば、バイトで忙しい、と。大変だなとは思うけれど、改めて言うまでもないことだが、一年のうち数ヶ月しか練習しないサッカー選手なんているだろうか? 一年の大半をバイトで過ごすひとはフリーターであって、俳優でもなんでもない。その自覚がほしい。
わたしが劇団をやってた時は、日曜以外はほとんど毎日数時間の稽古をしていた。最初は日曜もやっていたが、鴻上くんに、やり過ぎでしょといわれ、彼のアドバイスに従ったのだった。懐かしい。
DRY BONESの稽古量は、通常は週三日。本番の一ヶ月前くらいから週5・6となる。わたしの知る限り、この量の稽古をしている劇団は、少なくても、関西にはほかにないのではないか。もちろん、これでも少なすぎますが。
話は唐突に変わりますが、小さいテレビだダメだ。先に書いた「俯瞰のひき絵」の美しさを感じたのは、東京の住まいの大型テレビを見ての感想。河内小阪の仮住まいにあるテレビは13インチ? 昨日、原稿がすすまないのでテレビをつけたらスペインVSスイスをやっていたのだけれど、さほどの迫力も美しさも感じられず、スコアの字が小さすぎて、0対0なのか、0対1なのか、1対1なのかが判読できず、イライラしてしまった。
ま、お蔭で、大阪にいる間はWカップスルーで、サクサクと仕事も捗るわけですが。

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