主に古川いおりのこと 「悲しき玩具 伸子先生の~」③2015.07.11
なんだか硬い論調に終始してしまったが、「悲しき玩具~」は、軽くしなやかな、上質のユーモアに満ち満ちた映画だ。伸子先生を演じる古川いおりは、それを見事に体現している。
オヤ? と思うほどの美貌と、それを裏切るかのような太短い足とのアンバランス! 不均衡は運動的かつエロティックなのだ。それに、鼻にかかったような甘ったるい声も堪らないのだが、なんといっても俳優としての偏差値が高い、そこが彼女の最大の魅力だ。最終的には、アメリカに留学する内山くんへの餞別として、伸子先生は内山くんと一線を超えることになるのだが、その最中、内山くんが「先生、好きだ」と言うと、彼の口を優しく手で覆い、「愛のあるセックスは、恋人としなさい」なんて、ちょっと小洒落た、下手な俳優が口にすれば臭くなりそうな台詞を、彼女はさらりと言ってのける、まるであの健さんのように。語る自分と語られる台詞との距離測定がちゃんと出来るので、TVドラマでよく見るような、過剰に情緒的になったり、口先でボソボソ言ってニュアンス出してます、みたいな、みっともないことはしない。監督の指示も的確なのだろうが、しかし、いくら的確な指示を出したって、偏差値の低い俳優は応えられないわけだから、やっぱり彼女は優秀なのだ。
内山くんと、そして、伸子先生をも指しているはずのタイトルは、むろん、啄木の有名な歌集からの借用だが、その借りを返済するかのように(?)、伸子先生は授業で啄木のいくつかの短歌を読み、時に、画面の片隅に啄木の短歌が文字として浮かび上がる。そのシーン・カットに叶ったものもあれば、そうでないのもあり、どっちにしても、それは緊張を緩和する働きを示すので、笑いを誘う。しかも、それらは「悲しき玩具」に収められたものではなく、同じ啄木の歌集「一握の砂」に収められたものであることが、最後に流れるタイトルで明らかにされる、というオチもついてる。マイッタ。