竹内銃一郎のキノG語録

マグリットVSトータルテンボス2015.07.22

21日お昼過ぎ、京都市立美術館で開催中の「マグリット展」に出かける。「ルーブル展」の時は、三条からバスに乗ったが、今日は灼熱地獄をものともせず歩いていく。「たけ散歩」。館内は予想的中。ルーブル展の来館者の平均年齢は60を超えていたと思われたが、今回はぐっと下がって30前後。夏休みに入っていることもあってか、親子連れが目立つ。小学生のカップルもいた。うらやましい。ふたりに幸アレ。

生・マグリットを見るのは初めてだ。もう30年ほど前になるのか、美術雑誌に橋本治が、かなり辛らつなマグリット評を書いていた。絵が粗いとか塗りが甘いとか。そのことが頭に残っていたためか、もうひとつ感銘薄く。じっくりつぶさに見る絵ではないな、と。絵のことなどわたしにはよく分からぬが、これくらいなら、近大の造形の学生でも描けるのではないか、と思ったり。もちろん、マグリットのような奇想の持ち主がいるとは思えず、あくまで技術的に、ということですが。でも、折角来たのだからと、2800円也の図録と、「光の帝国Ⅱ」のファイル、それに、「神々の怒り」というタイトルの、走る車の上を騎手が馬を疾走させているポスト・カードを買う。マグリットの画集は結構見ているが、これは知らなかった。

美術館から、白川という小川沿いにまたぶらぶらと「たけ散歩」をして、祇園四条に出る途中、八坂神社前に「祇園吉本」があるのを発見。看板を見ると、7時から「THE  MANZAI」があり、ザ・ぼんち、ダイアン、トレンディエンジェルまで出演するとあっては、これを見逃すわけにはいかない。

館内はほぼ満杯。観客の大半は若い、若すぎる女性たち。小学生の軍団もいて、こちらの平均年齢は24、5といったところか。席がすり鉢状の客席の上の方だったから、見下ろすと禿頭のお方が三人いたが、観客の中ではわたしが最年長だったかも知れない。

トップにザ・ぼんちが出てきて驚く。彼らの漫才は、ネタが面白いとか面白くないとかそんなレベルにはもういない。おさむが「この東京かぶれが!」と何度か怒鳴り、その度に体を掻く、それをまさとが「なにしてんねん」と聞くと、「東京にかぶれて体が痒いねん」と応える。こんなギャグ(?)を他がやったら、客は白けるだけだが、これをふたりがやるとひっくり返るほど面白いのだ。ダイアンは、わたしの好きな「ペンション」をやった。ナマで見ると、西澤のボケに、半歩下がって、体を痙攣させながら突っ込む津田のおかしさが堪らない。彼のハイトーンの声が館内に響く心地よさ! でも、本日のMVPはトータルテンボスだった。TVで一度見たことがあるネタだが。藤田が「最近よく言い間違いをすんだよ」と言うと、大村が「俺はよく聞き間違いをするんだ」と応え、そこから「言い間違い」VS「聞き間違い」のバトルになるというナンセンス! まるでベケットの芝居を見ているような面白さだった。というか、このレベルのベケットの芝居を、わたしは見たことがない。

充実の一日。

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