あれは賢治の「星めぐりの歌」でしょ。 映画「サイダーハウスルール」で流れるメロディ2015.07.24
録画しておいた「サイダーハウスルール」を見る。孤児院で育ち、産婦人科医でもある院長の片腕として重用される主人公が、院長の「自分の後継者に」との誘いを、もっと外の世界を知りたいと断り、孤児院を出て、リンゴ園で働くようになる。そして …。きわめてまっとうな青春・成長物語。ジョン・アーヴォングの同名の小説が原作で、いかにも文芸映画という枠から外れない作りだが、だから退屈かというとそうではなく。20人ほどはいそうな孤児院の子供たち、リンゴ園で働く人々等々を、ひとりひとり丁寧に描いていて、監督の手堅い演出力に感心する。登場人物それぞれの背景が見えるのだ。しかし。それはそれとして。
映画が始まって間もなく、聴き覚えのある曲が流れ、少し経って、それは宮澤賢治作曲の「星めぐりの歌」であることに気づく。なぜこの曲が使われたのかを知りたくて、見終わってすぐにネットで「サイダー~宮澤賢治」で検索してみるが、知りたい情報が出てこない。わたしの勘違いかもしれないと思い、もう一度、その曲が流れたシーンを見て、確かにこれは「星めぐりの歌」であると確信し、それから、映画の最後のタイトルロールを見直して、KENNJI MIYAZAWAの名を探すが見つけられなかった。これはどういうことか? 「サイダー~」のメイン曲をユーチューブで聴くと、「星めぐりの歌」ではないが、映画の中で繰り返し流れていた、明らかに「星めぐりの歌」をアレンジしたと思われるメロディが流れる。念のためもう一度、誤解のないように書くが、映画では「星めぐりの歌」のメロディが流れ、そして、この曲をアレンジしたと思われるメロディが、メインテーマになっているのだ。
おかしい。ネットには、重箱の隅をつつくような瑣末なあげつらいが溢れているのに、このアレンジのことさえ、ネットでは誰も指摘してないのはどうしたことか。明らかなパクリなのに。著作権が切れてる? それにしたって、作曲者に敬意を表して、その名をタイトルに載せていいはずだ。いったい誰のさしがねでこんなことに …?