最初の彼女の名はグロリア・ストーリー(=栄光の物語)、本名だ。2017.04.18
暗雲立ち込める週末。このところの競馬、わたしがこれこそがと本命に推した馬が、これでもかとばかり次々とレース途中で落馬したり、あるいはスタートで大きく出遅れたり。落馬も出遅れもそうそう起きることではない。確率からいって全レース中せいぜい数パーセントだろう。にもかかわらず、そんなバカげた、予想し得ないことをわたしの本命馬がやらかしてくれるのである。思えば去年の11月半ば、わが愛馬コロちゃんが、断トツの一番人気になった5頭だてのレースで、4着に惨敗したのをきっかけに始まったのだ、こんな悪夢が。それまでは、POGのわが所有馬、あれもこれも出れば勝つの連続で、一時は勝率が6割を超え、まさに我が世の春を謳歌していたのに、コロちゃんの惨敗以降は、出る馬出る馬、断然人気での惜敗続き。こんな状態で馬券など当たろうはずがない。さらに不幸が追い打ちをかける。POGメンバーのひとりであるSさんの持ち馬アルアインが、な、なんと皐月賞を7番人気で勝ってしまった。嗚呼、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
日曜日。とりついて離れない悪霊を振り払うべく、全レース終了後、京都国立博物館へ「海北友松展」を見に行く。「この絵師、ただものではない!」というキャッチコピーに誘われたのだったが、わたしにはそれほどのものとは感じられず。しかし、展示されていた絵のすべてが60歳以降に描かれたものであるらしいことに驚く。彼のことはなにも知らなかったのだ。館内には、友松の略歴を記したものが掲示されていたのだが、なぜか、20代後半から60歳になるまでがほとんど空白になっていて …。その間の約30年間、彼はどこでなにをしていたのだろう? いずれにせよ、そんなブランクがありながら、60を過ぎて売れっ子絵師になったのだから、大変なものだ。沈黙の30年間は、技術の研鑽に …?
驚いたと言えば。土曜に見た「祇園・継承のとき ~井上八千代から三千代へ~」(NHKBSプレミアムカフェ 録画)である。人間国宝の八千代さん、撮影時は体調が万全ではないようなことを仰っていたが、番組の最後に舞をみせて、それが90歳を超えているとは到底信じがたいもので。艶があって、にもかかわらず少女のような初々しさが! いや、単純に、体幹がしっかりしているのは素人目にも分かり、片足で一回転してもまったく体がぶれないのだ。更に驚かされたのが、彼女の師である三世井上八千代の舞だった。保存状態がよろしくない古いフィルムに収められたもので、しかもロングで撮られているから、顔が定かではないこともあったのだろうが、まったくの年齢不詳、撮影時は100歳を超えていたはずのこちらは、小柄な四世八千代とは違ってずいぶん大柄なひと、それがもうダイナミックかつ繊細な舞を見せるのだから、驚きの遥か上をいくもので、年齢や性別がどうこうと言うレベルではないのだ。わたしだけでなく、こんな舞を目の当りにしたら、若いフィギュアー選手や体操選手がどれだけ廻ろうが捻ろうが、そんなもの、おこちゃまランチにしか見えないはずだ。
26歳で引退するらしいあの真央ちゃんの選手生活はおそらく20年とちょっと、フツーに考えればまだ5,60年はありそうなこれからの長い人生をどう生きるのか。ふたりの八千代さんが90歳を超えてなお現役だったことを考えると、彼女の選択はどこかおかしいのではないか。いや、彼女だけではない。ほとんどのスポーツ選手は、競技の差はあれ、40歳前に引退してしまう。大半は体のあちこちに抱えているケガがそのような選択を強いるのだが、ケガを抱えてしまうのは稽古・練習の方法に誤りがあり、なおかつ、日々のケアに手抜きがあるからだ。目標を近くに置きすぎるためでもある。誤りの典型例が高校野球だ。夏の甲子園出場を最大目標におくから、炎天下、エースにとんでもない球数を投げさせて、それが後々のケガの原因になってしまうのだ。マラソンや競歩など、練習方法を見直せば、本当は50、60になっても第一線で活躍出来るのではと思うけれど、20代での結果を求めるから、無理を重ねて選手寿命を縮めてしまう。五世八千代となった三千代さんが言っていた、「60を超えないと出来ない演目がある」と。もちろん、二十代の若者にしか出来ないこともある。しかし、あと10年も経てば、この国の平均寿命は、女性に限れば、限りなく90歳に近づくはずだ。この厳粛な事実を受け止めることが必要なのではなかろうか。
日曜の朝のTVで毎度偉そうなことを言っている(らしい)張本は、しかし、140キロの速球を投げられたらもう手も足も出まい。年齢はまだ70代半ばなのに? 三世八千代さんから見れば息子くらいの歳なのに? あんたの方こそ「喝ッ!」だ。
今回のタイトルは、年齢を重ねてもなおカッコいいボブ・ディランの言葉から。因みに、ディランと張本は一歳違いです。