竹内銃一郎のキノG語録

「イルカに乗った少年」から迂回して  映画「ロブスター」を見る2017.06.17

とんでもない映画を見てしまった。もう見て数時間以上経っているのに、興奮冷めやらぬというか、なんと形容していいか分からない。こう書いているいまも「イルカに乗った少年」のメロディが、頭の中を流れてる。オットット。「イルカに~」といっても、城みちるのアレじゃなく、ソフィア・ローレンが主演した「島の女」で流れる方。ま、若いひとはどっちも耳に覚えはないでしょうが。とかなんとか言っちゃって。実はわたしもさっきネット検索でその事実を知ったのですが。え? イルカがどうしたって? いやだから、「ロブスター」の最後に、「イルカに~」が流れるのですよ。これがもう、哀切なメロディが、胸にしみてしみて。

確かに聞き覚えはある。でもタイトルが分からず、誰の曲で誰が歌っているのかも分からず。困ったなあとアレコレ検索してたら、「ロブスター」のレヴューでこの曲に触れている奇特な方がおられて、分かった、と。やっぱりネットは便利だわ。

YouTubeでは「島の女」の中でソフィア・ローレンが歌っているものと、ジュリー・ロンドンが歌っているものが聴けるが、画面の右にこんなのも見れマッセ、聴けマッセと、この曲と同時代のというか、もう少し新しい懐メロのタイトルが並んでいて、あれこれついつい20曲ほど聴いてしまう(暇だなあ)。プレスリーはやっぱり、もの凄く歌がお上手で、歌う姿が男のわたしでさえ「どうにでもしてェ」と言いたくなるほど色気たっぷり。それから第二のプレスリーみたいに言われていた、お懐かしや、リッキー・ネルソンの「ハロー、メリー・ルー」、結構結構。フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」、ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」にも胸躍らせたが、今日の懐メロナンバーワンは、リトル・ペギー・マーチの「I will follow him」。このひと、ウィキで調べたらわたしと同い年、ということは、ちあきなおみと同級生ってことになるが、こっちはいまも現役で、名前からさすがにリトルは取ったようだが、いまも元気に「I will follow him」を歌っている。頑張れ。

そこで「ロブスター」。近年でもっとも「コレだぁ!」と思った映画は、W・アンダーソンの「グランド・ブダペスト・ホテル」と「ムーンライズ・キングダム」だが、それに勝るとも劣らずと受け止めてしまったのがこの映画だ。真面目なひとは多分「ふざけるな!」と怒り出しそうな、わたしのような怖がりは間違いなく二度三度と顔をそむけそうな、奇想天外な基本設定、にもかかわらず、高貴なとでも形容したいような上質のメロドラマになっていて(レイチェル・ワイズが登場する後半、痺れる!)、わたしの趣味にピタリと重なる、文句のつけようがない、これ以上は、うーんという唸り声しか出てこないので、今日のところはこの辺で …。(次回に続く)

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