戯曲は台詞あってこそなので … 「花ノ紋」解題3 Moon Guitar②2017.11.22
S6)タクミの自宅 前シーンの2日後の夕方。工房から月琴を奏でる音。納富が来ている。あずさと別れてほしいとタクミに頼みに来たのだ。あずさは心が揺れている。タクミ、工房から現れる。が、納富は肝心の話が切り出せない。あんなが現れる。納富、自分はお邪魔のようだからと出ていく。追いかけるあずさ。あんなは殺しの報酬を持ってきたのだ。タクミはあんなが分からないというと、「危ない橋わたる、わたしドキドキする」と答える。「あんな、遅いよ」と。リュウが現れる。あんなと一緒に来ていたのだ。あんな、車で待ってると、去る。リュウ、再度の殺しの依頼をする。タクミが断ると、家族がどうなってもいいのかと脅迫する。殺しの相手は、あんなだと言う。この前殺した相手の組の疑いの目を逸らすために、身内をひとりやるのだ、と。あんなはあんたの愛人じゃないかとと問うと、リュウは「愛人はほかにもいっぱいいる」と言って笑いながら出ていく。あずさが戻ってくる。テーブルの上の紙袋の中身に気づき、これはどうしたのかと聞く。たくみ、答えられない。納富が飛び込んできて、あずさと結婚させてくださいと土下座して。
S7)タクミの自宅 前シーンの翌日の昼下がり。マオが覚束ない指先で月琴を弾いている。修理が終わったので受け取りに来たのだ。タクミ、昨日のリュウが持ち出した一件をマオに話し、まあ、どこまで本気か分からないがと付け加えると、リュウが直接来たのは本気の証拠だ。その件は俺にまかせろとマオ。いや、降りかかった火の粉は自分で払うとタクミ。元はといえば、お前をリュウに紹介したのは俺だ、責任ある俺にまかせろと言って譲らない。そして、奥さんと一緒にしばらく身を隠せ、と。タクミ、女房は昨日田舎に帰った。じゃ、お前も彼女の田舎で身を隠せ。なにをするつもりだ、とタクミ。「これから考えるよ、平和的解決方法を」と、マオ。
S8)前シーンと同じ日の夜 横浜の倉庫街あたり(?) マオとリュウ。マオ、タクミにあんなを殺させる話は考え直してほしいと頼んでいる。リュウ、俺に意見する気かと怒る。マオ「タクミがこの話を断ったらどうなる?」リュウ「あの男、家族殺して、他の誰か探す」「そんなにあんなを殺したいのか」「あんな殺さないとわたし危ない」。あんなが現れる。ふたり、その登場に驚く。あんな、にこやかにリュウに駆け寄り抱きついて、持っていたトカレフの引き金をひく。あんなは物陰に隠れてふたりの話を聞いていたのだ。
S9)タクミの自宅 夜。あずさが北海道の牧場で働いているカイジからの手紙を読んでいる。と、カイジが現れる。手紙には「牧場での仕事は天職のような気がする」と書いていたのに。タクミのことを聞かれたあずさ、「先週出術をして、まだ病院に」と答える。カイジ、ちょっと横になるといって、タクミとあずさの寝室へ。どこからか月琴を奏でる音が聴こえる。 おしまい
この戯曲は3年前に書かれたもので、だから、創作過程などブログに書いているのではないかと過去を遡ってみたら …。4/11「Moon guitar」ノート 7/04 わたしは茄子も嫌いです 7/22「Moon guitar」完成! と、とりあえず三つ、見つかりました。お時間と興味がおありの方はそちらの方もお読みください。
「あたま山心中」の時にも書きましたが、ストーリーを簡単にまとめるというのは本当に難しい。なんとなく書き終わってもすっきりしない。なぜかと言えば、こんなことを書くのはどうかと思うのですが、前回今回と書けなかった細かな台詞のやりとりにこそ、この戯曲の面白さがあるからで。先に挙げた「わたしは茄子も嫌いです」で、この戯曲のもとになったW・ヴェンダースの映画「アメリカの友人」は、上演時間100分のうち、半分の50分くらいは台詞がないが、芝居の場合はそうはいかない。ということは、その台詞のない50分を台詞で埋めて、なおかつお釣りがくるような戯曲に仕立て上げねば、なんてことが書いてあり。はい、そういうことなんで、興味をお持ちの方は、遠慮なく、「Moon guitar」のデータを送って下さいと、ご連絡ください。