竹内銃一郎のキノG語録

映画「エンド・オブ・トンネル」は必見の快作だ。2018.04.06

やっぱり大谷翔平は凄かった。もちろん、これから対戦相手の対応が一段と厳しいものになるのは必至で、ケガなどあれば、今年は1勝・2本塁打のまま終わることだってあるかもしれない。それでも、開幕の数試合でこんな成績をあげられる選手など、これからそうそう出てこないはずだから、彼はすでにメジャーリーグの歴史に残る選手になったのだ。何年か前のブログだかツイッターに、「進撃の3巨人」として3人の若手を推奨したことがある。その巨漢3人とは、大相撲の逸ノ城、吉本の酒井藍、日ハムの大谷で、藍ちゃんは去年、吉本新喜劇の座長になり、一時期低迷していた逸ノ城も、ここにきて大関を狙える気配を漂わせ始め、そして翔ちゃん。この勢いで、明後日の桜花賞に出走するわが愛馬・アーモンドアイにも、勝っていただきたいなあ、と。ま、こっちのアイちゃんは中肉中背・お目目パッチリの美少女ですが。

さて、本題。先ごろWOWOWで見た映画「エンド・オブ・トンネル」はとんでもない映画だった。冒頭。雨に濡れた夜の街並み(ブエノスアイレス?)から始まって、その中の一軒にカメラは侵入。まず草木が生い茂った庭が映し出されて、それから室内に移動する。と、部屋は本等のモノたちが散乱していて、その中に、息も絶え絶えといった感じで、座布団に横たわっている老犬。隣の部屋で車椅子の男(主人公)が電話をかけている。どうやら相手は医師らしく、動かなくなったカシミールという名の老犬は、もうどうにも手の施しようがないという返事らしい。そういえば、冒頭から時々、幼い男の子と彼の母親との会話が聞こえていて、その中でカシミールの名が繰り返されていた。車椅子の男は、これ以外の対処法はないと思い、カシミールを安楽死させるべく準備をしていると、入口のドアが開いて、5,6歳かと思われる女の子を連れた、ちょっとケバケバの美人が現れ、「二階を貸してほしいんですけど …」、と。

ここまで5分ほど。あれもこれも意味ありげで、重苦しい展開になりそうな、わたくしの苦手な気配。削除してしまおうかどうか迷いながらしばらく見ていたら、思わぬ展開に。母親とさえ口をきかない徹底無口な女の子が、カシミールには親しく接し、そしたら、横になったまま動かなかったカシミールが起きて動き出す奇跡が起きたところあたりから、俄然、サスペンスフルな展開になって …、ああ、これ以上は書けません。ネタバレのなにが悪いの? というのがわたしの基本姿勢だが、これだけは。というか、あれやこれや驚きの連続で、書きだしたら延々と続きそうで …。特に最後の30分。主人公と銀行強盗を実行しようとしている悪党どもの攻防は、まるでサッカーのトップチームのゴールエリア内の攻防を思わせる、高度な技と力の点取り合戦で、1点とったらすぐに連続ゴールを決められて、万事休すかと思いきや、こっちも次々ゴールの嵐、みたいな。それに先の母娘も絡んでくるから、いやもうドエライことの連続なのだ。なんといっても、監督のロドリオ・グランデの練りに練られたシナリオが素晴らしい! 前半にタネ(ネタ)を撒き、花を咲かせて、最後に果実収穫、という方法は、きわめてオーソドックスな創作法だが、それがなにか? と思われた設定、例えば、前述した徹底無口な女の子。後半間もなく、なぜそういうことになったのかが明かされるのだが、それが思いも及ばなかった出来事のせいで …とか。

さほど期待していたわけでなく、これまで秀作を幾本も世に送り出している、スペイン・アルゼンチンの共同制作だからという、ただそれだけの理由で見たから、驚きも大きかったのだろう。車椅子の男の職業は? 等々、不明な点は幾つかあるが、そんなことはどうでもよろしいと鷹揚な気分にさせてくれる、これはとんでもない快作だ。

 

 

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