竹内銃一郎のキノG語録

ぶっ飛び三昧 「金色の魚」の周辺  「タニマラ」メモ⑦2018.04.10

「金色の魚」を含む「光と、そしていくつかのもの」は、全10景からなり、中島みゆきの「ファイト」に合わせて出演者全員で踊る「景5 悲しむ子供(たち)の踊り」と、景1から景9までのそれぞれ一部を切り取ってつなげた「景10 光と、そしていくつかのも」を除く他の8景はすべて、詩や小説を引用、もしくはベースにして作られている。「金色の魚」は、谷川の詩の他にも、竿野頼子の「タイムスリップ・コンビナート」をヒントに、母親が魚に恋をするという話を作り、D・M・キャプランの短編小説「じゃあね、あなたのたった一人の母親より」の一部を引用して、ヨリ子の最後のモノローグとしている。主人公の名も、前述の竿野頼子さんからお借りした。

「タイムスリップ~」はどんなお話だったのか、もうすっかり忘れてしまったので、読み直そうと思い本棚を探したが見当たらず、仕方がないので、ネットで「あらすじ」を検索してみたが、どれも手をこまねいているようで判然とせず。どれにも、「マグロだかなんだか分からない相手から電話がかかってきて …」と小説の冒頭部らしい一節を紹介していたが、わたしの記憶では、カッコいいシャチに恋して …という話ではなかったか、と。

「光と、~」を書いた何年後かに、彼女の「二百回忌」という小説を映画化したいのでシナリオを …、と某映画監督からお話があって、その時ずいぶん彼女の小説を読んだ。どれもぶっ飛んだ話で、中でも、母親と折り合いの悪い女性が、いつものように母親と激しい口論していると、母親がどんどん小さくなっていって、とうとう畳の目の中に消えてしまって …という小説。あれはなんというタイトルだったか? 依頼されたシナリオは、これはわたしの手に負えそうにないのでお断りした。訳の分からないものを書くと言われているわたしがギブアップするくらいだから、ホント凄いんですよ、竿野頼子の小説のぶっ飛びぐあいは。

ぶっ飛ぶと言えば。日曜・桜花賞でのアーモンドアイちゃんの圧勝には驚きましたな。四角を回って最後の直線に入るあたりから、それまで最後方にいたのに、一気に16頭ごぼう抜きしてゴールですよ。こんな凄い勝ち方は、やっぱりPOGでわたしの所有馬だった、あのディープインパクト以来だ、多分。それと、翔ちゃん。前回、1勝2本塁打で終わっても …と書いたが、もう2勝3本塁打のひとになってしまった。ふたり(?)には明らかに共通点があり、それは、育ちの良さでしょう、つまり、育った環境がよかったと。翔ちゃんの取材での受け答えでそれが分かります。ニコニコしながら理路整然と話す、偉ぶったところ皆無。ま、アイちゃんには取材の受け答えは無理ですが、パドックでも馬場に出ても冷静というか、感情のコントロールが出来てるみたいというか。落ち着き払ってるというのじゃなく、人間でいえば女子高生くらいの歳だから時々やんちゃな動きもするんだけど、それが可愛いし、すぐに収まるし。でも、こういうひと(?)たちは俳優には向いてないのです。俳優は、常に不幸不満から逃れられないような<業>を抱えてるひとじゃないと。例えば、幼い頃に父親が商売で失敗して、それまでなに不自由なく暮らしていたのが一転、明日の米にも困るような生活になって、昨日までは愛想を振りまきながら接してきた人間が、ソッポを向いたり、蔑んだような眼差しでこっちをみたり、要するに、人間はころころ変わるもんだ、ひとは誰でも百面相だということを、幼い頃に実感したことがあるようなひとがいいんです、多分。

 

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