竹内銃一郎のキノG語録

銀座と「犬が島」をつなぐもの2018.06.06

先週の金曜日、POG会議のために東京へ。時々、東京方面から観劇のお誘いを受けるのだが、ついでがないと重い腰が上がらない、申し訳ないのだけれど。でも、POG会議はダービー同様年に一度で、最上級のお楽しみ必至で、なおかつ今年は、(アーモンド)アイちゃんの二冠制覇でガッポリお金が懐に、というのだから、顔を出さないわけにはいかない。会議は銀座の居酒屋で約4時間! ドラ1のソルドラードをはじめ欲しいと思っていた馬の8割を指名出来、飲んで食って議論白熱、四方山話に花も咲き、大満足で築地のビジネスホテルに帰る。翌朝、窓から差し込む朝の光に起こされて、8時前チェックアウト。歩いて2、3分のところにある築地本願寺に出かけるが。京都の寺社に比べると樹々が格段に少なく、殺伐とまでは言わないものの、静かな、落ち着いた気分になれず。それは有楽町駅までの街並みも同様で、一言で言えば殺風景。おそらく交通量が京都に比べて多いからだろうが、それだけではなく、街並みが雑然としていて、なんだか埃っぽいのだ、そして、ケバイ? 安っぽい? 昔の銀座はいくら賑やかでも、もう少ししっとりしていたような気がするが。交通量とひとの多さを除けば、全国いたるところにある「○○銀座」と大差ないのでは? と。そして、外見は賑やかだが、実質シャッター街と変わらないのでは? とも。

「犬が島」、やっと見る、昨日。期待にそぐわない快作。絶妙なタイミングで放たれるギャグの冴えは相変わらずで、牝犬・ナツメグの色っぽさにはポーっとさせられ、二度流される「七人の侍」のテーマ曲に感動。曲自体の素晴らしさもさることながら、なにより、先人(黒澤明)への敬意が感じられたからだ。そして「小雨の丘」、笠置シズ子の「買い物ブギ」(だったかな?)もベリー・グッ! 北斎や広重の絵を思わせるいかにも<日本的>なカットの連打は、チープな印象を与えるのだが、しかし、主なる舞台となる犬が島の荒廃の凄まじさが、その<日本的>なるものによってさらに強調されるのだ。あっちこっちと激しく物語は右往左往するのだが、高校生と捨て犬たちが権力者の圧政に牙をむいて立ち上がる、という分かりやすい、シャンとした背骨が全体を貫いているので、多少の混乱はあっても理解困難にはならない。さすがウェス・アンダーソン!

と、ここまで書いて、「ああ」と気づいた。「犬が島」が舞台にしている20年後の日本の架空都市の風景が、先週歩いた銀座にどこか似ていることに。どちらにも吹き抜けるタニマラ(=さびしい風) …

 

 

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