竹内銃一郎のキノG語録

本日「恋愛日記 2(改訂版)」データ化完了2018.12.19

よく言われるように、プロ野球史にその名を残す大打者だって、10回に7回はアウトを食らっているのである。サッカーのことは無知に等しいが、こっちの名プレイヤーだって、シュートのゴール率は同じようなものではなかろうか。なにが言いたい? NHKBSで三日連続で放映された向田邦子・作の「阿修羅のごとく」が、こちらの期待を甚だしく裏切る凡作だったからだ。かなり大きなショックを受けてしまって。弘法も筆の誤り? いかな「名人」だって、不発に終わることがあるのだなあ。うーん。演出家の問題もあろう。作られた1979年当時のTV界では巨匠の如き扱い・評価を受けていた、演出家・和田勉。多用する顔のアップが、当時もウザかったが、TVの画面がグンと大きくなったいま見るともう、無能無策としか思えない。ただ粗いだけの演出。

推定年齢アラフォーの長女から二十代前半と思われる四女までの、四人姉妹を軸とした<家族>のお話で、要するに、表向きは仲の良い姉妹だが、それぞれの腹の中は「阿修羅のごとく」で …というのだが、それがどうしたって感じ。次から次へと<事件>という形容で語られそうな出来事が起こるのも、ワタシ的にはリアリティがない。そもそも、彼女たちの父親が、齢70にして(わたしとほぼ同年齢!)外に女がいることが発覚し、それがキッカケとなって、それぞれのメンドーな恋愛事情が明らかになり …という展開も、まったくドキドキさせてくれない。親父の不倫で子供たちが大騒ぎというのもねえ。いいじゃないか、好きにさせとけば。彼の人生のゴールはもうすぐそこなんだから。「あ・うん」ではわたしを幾度も唸らせた、小技のキレもなく …。大好きな八千草薫(次女役)さんも悪くないけど、また見たいと思わせるほどのことはなく。

またまた長い前置きになってしまった。タイトルにあるように、「恋愛日記 2(改訂版)」のデータ化、約一ヶ月で完了したのです。よかったよかった。これまでの「改訂版 データ化」と同様、いらない台詞はカットし、カッタルイ言い回し部分を整理し、日本語としておかしい部分も修正、ト書きもより分かりやすくした(つもりですが …)。かなりの量の長台詞が幾つかあって驚く。こんなのよく書いたなと自分に驚き、さらに、こんなのよく覚えたなと演じた俳優たちに驚き。この戯曲が収められている「竹内銃一郎戯曲集4」のあとがきに、この戯曲に対するかなり辛辣な批判が書かれているが、いまそれを読むと、「なんかカッコつけてンな、こいつ」と自分を薄笑いしてしまう。作品を改めて読み直してみると、これはやっぱりよく出来ていると、思わず自賛してしまうほどよく出来ている。劇中で引用されている正津勉の二編の詩、「酔って」の一部と、劇の最後に置かれている「おやすみ、すぷーん」がとても効いていて、泣ける。わたしのことをいまだに、半ば侮蔑的に「不条理劇の作家」と称している方々に是非読んでもらいたい。ぜんぜん違う。だから物足りないと思った方々も、発表当時にはおられたが。初演は1986年だから、以前にも書いたが、影響を受けているかと思われる向田邦子の「あ・うん」放映から6年後に書かれた作品である。

お読みになりたい方は、遠慮なく、このブログの「リクエスト」を経由して、ご連絡ください。どうも「お金をとられる」と誤解されている方もおられるようですが、いらないんです、お金は。また、上演予定なんかなくて結構ですので。よろしく。

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