竹内銃一郎のキノG語録

不均衡 今年の就職事情2010.09.09

ついさっき専攻の同僚から聞いたのですが、今年4月に就職して、まだ半年も経たないというのに、もうかなりの卒業生が会社を辞めたらしい。大学は就職率のアップが大学の評価につながり、ひいては受験生の獲得にもつながるというので、なにがなんでも就職させようとする。もちろん、わたしたちの専攻はそんなことはしてないのですが。大学だけでなく、家族などの周りからも就職どうする? みたいな雰囲気が漂ってくるしで、まあ、多くの学生はさほどの気乗りもないまま就職をすると。心の中では、このブログでも再三書いてきたように、全能感に後押しされて、自分はやれば出来るひとと思っていたりもするから、1、2ヶ月働くと、わたしはこんなところにいる人間じゃないなんて思うようになって、辞めてしまう、と。
先週のニュースによれば、今年の新卒対象の求人倍率は、大企業は0.5倍と最悪に近い状態だけれど、一方、中小企業は4倍を超えるという。詳しい実情は分からないけれど、普通にこの数字だけを見れば、全然就職氷河期じゃない。要するに、多くの学生たちは大企業ばかりを狙ってて、だからなかなか就職先が決まらないわけでしょ、と思ってしまう。 就職してもすぐに辞める、大企業ばかりに目を向ける。原因は同じところにある。それは?
一言で言えば、いまの多くの若い人たちには、働く必然がないからだ。
働く必然? だって、働いて養わなければならない対象なんていないわけでしょ。自分ひとりの食い扶持さえ確保出来ればいいのなら、バイトでいいんだもの。そりゃ、ちょっと辛けりゃ辞めますよ。 自分が働かないと家族が飢え死にしてしまうとなれば、大企業じゃなきゃなんて、誰もそんな贅沢こきません。
ずいぶん前に、若いひとたちにはもう「望むもの」がない、なんて書きましたが。
最近流れてるロトのCMがそんな実情を見事に明らかにしています。例の、4億円が当たった香取慎吾が、そのお金でキリンを買って、今度は象まで買ってってヤツですね。
つまり、お金があったら、なんてことはみんな言う。4億円? そりゃほしいと誰もが思う。だけど、実際にいざそんな大金を手にしても、ほしいものなんかなくて……、という話でしょ。
一生懸命働いて、車を買って家を建ててというひと昔前の、ささやかな夢がもう文字通りの絵空事としか思えないわけでしょ、いまの若い人たちの多くは。
前述した同僚の話では、○○くんは、真面目に働かないと年金が貰えないからなんて言ってた、と。
もう、ほとんど虚の世界を生きてる! 辛い時代です。
不均衡といえば。先日、久しぶりに本屋に行ったら、店頭に「世界には10億の飢えに苦しむひとたちと、10億の肥満に悩むひとがいる」というようなタイトルの本が置いてありました。帰り際で急いでいたので、手には取らなかったのですが。
それが少なからずショックで。わたしは基本的には不真面目で、時々真面目になる人間ですが、ああ、今月から食費を10%カットして、それから、週末の競馬で勝ったら儲けの10%くらいは、ユニセフに寄付しようなどと殊勝にも考えたわけです。
マクドナルドもなあ。儲かってんだから、売り上げの1%くらい飢えたひとたちのために使えよ。値下げ競争で必死の3バカ牛丼トリオもさ、うちは売り上げの5%を世界の飢えた人々を助けるために使っているから、安易な値下げは出来ないのです、とかキャンペーンを張ったらどう? それが明確な他社との差別化になって、売り上げにつながるんじゃないかと、思ったりするのですが。

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