竹内銃一郎のキノG語録

苦闘の日々が間もなく始まる?2019.05.31

おお、今日で5月も終わりだ。10月公演の稽古初日、6/5まで残り一週間を切った。

まだ4ヶ月もあるのにもう? と驚かれる方もおられようが、今回は二本の演出に一本出演と、わたしにとってはかなりの労働量。ま、自分で蒔いた種なのですが。なので、本格的な稽古が始まる8月までに、6、7月の週2~3回の稽古で、ある程度のところまで仕上げておきたいと考えたのである。

「本番でちゃんと台詞が言えるだろうか」という不安は、おそらく、俳優にとって共通にして最大のものだろうが、わたしの場合、俳優をやるのは久方振りで不慣れなことこの上なく、おまけに、ふたり芝居だから覚えなければならない台詞は大量にあり、更には、数回前にも書いたが、ここにきて加速度的に記憶力が衰えている。これはエライことですよ。先日会った、わたしより一つ年下の柄本さんに、「最近、台詞覚えはどう?」と聞いたら、やっぱりなかなか出なくなったので、毎日時間をかけて台本を読んでいるとのこと。そう言えば。晩年、別役さんの新作に挑戦していた中村伸郎さんは、トイレと言わず洗面所と言わず、家の中のいたるところに台本の一部を置いたり貼ったりして、台詞覚えと闘っていたとか。あいつは? 柄本さんと同い年で、斜光社、秘法零番館で一緒だった木場勝己は、大げさではなく台詞覚えの達人で、当時は二度三度読み合わせをしただけでほぼ完璧に台詞を覚えたものだが、あれから30年近く経ったいまは、はたしてどうなんだろう?

今度わたしが俳優として出演する「今は昔、栄養映画館」は、1998年に木場の出演・プロデュース、竹内演出で上演されているが、今回わたしが演ずる「男1(自称映画監督)」を担当したのは故・すまけいさん。さっきウィキで確認したら、氏はこの時63歳で、てことは、今回共演する松本くんとほぼ同年代。稽古の時は氏もそしてわたしも、何度も笑い転げるほど楽しい時間を過ごしたのだが、いざ本番となったらスンナリなかなか台詞が出てこず、最後の旅公演の千秋楽までプロンプ付きとあいなった。この10数年後。竹内台本、松本演出で上演されたMODE公演「満ちる」にも出演されたすまさん。出演のオファーに応える前提条件として、「極力台詞は少なめに」と言われたが、書いているうちに、すまさんにこんな台詞を言わせたい、こんな冗談を、こんな悪態も、とまったく歯止めが効かなくなり、結果、長台詞の連発に。最終的には氏の台詞をかなりカットはしたのだが、やっぱり台詞がなかなか出てこず。しかし、松本演出はその対応策に工夫が凝らされていて、台詞がうまく出てこないというすまさんの厳しく切ない現実が、結果として、<巨匠の現在>を照らし出すという、思わぬ効果(?)を生み出すことに。

前述した柄本さんからのアドバイスもあり、数日前から、自らに一日二頁のノルマを課して、台詞覚えの日々を過ごしている。「それにしてもメンド臭い台詞回しだな、竹内のホンは」と文句を垂れつつ、フラフラと危うい足取りながら、とりあえず5頁まで辿り着いている。

 

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