竹内銃一郎のキノG語録

<媚びへつらい>からなお遠く   稽古日誌②2019.07.04

九州南部を襲った激しい雨。先日、夜行バスで熊本市内へ行く途中に通り過ぎた益城町、数年前の地震による被害の工事半ばを襲われて、またもやの被害があった模様。神はいないのか。それにしても。毎度のことながら、被害を伝えるTVニュースのお粗末さにムカツク。レポーターが語る言葉と映像がまったく違うのだ。「ほとんど川のようになって …」と伝えられる道路には、確かに水が流れてはいるものの、さらさら流れる春の小川ほどの水量さえなく、「体に痛みを感じる激しさ」とはとても見えない雨の勢い。レポーターの<盛りすぎ>の言葉にも問題はあるのだが、映像の凡庸さは、おそらく対象への接近のためらいの結果であろう。こんな<オオカミ少年>風のニュースを垂れ流していたら、視聴者は話半分としか受け止めず、結果、大きな危険・災害につながるのではないかと、わたしは憂慮するのだ。

昨日の夕方、京橋駅前でも同様の出来事が。稽古場に行くべく、改札口を出ると、マイクを通してバカでかい声が聞こえる。見ると、立憲民主党が参院選挙前のデモンストレーションであろう、辻元某、蓮舫等党の主要メンバーと、今度の選挙に出馬するらしい元・アイドルが集まって、MC役を引き受けたらしい、京都を選挙区とする福山某がなにやら喋っていたのだが、その口調・内容が二流三流の売れない芸人のようで、それに苛立つ。もう少し党が目指すところの気高い理想を語れないものか、と。そんなこと、集まった人々が望んでいないからと思っているからだろうが。いや、そんなもの、もうとっくの昔に失くしてしまっているのだ、だから聴衆への媚びへつらいに終始するのだ、きっと。

昨日の稽古を演・助の丑田に撮影してもらい、それをさっきPCで見る。稽古が終わった直後は、そのあまりに残念な結果に相当滅入ってしまったが、映像を見たら意外にも、それほど落ち込むこともない出来栄え。もちろん、他人様にお見せできるところまでいってはいないのだが。相手役の松本くんともども、台詞がすんなり出てこないのはとりあえず脇に置いといて。いや、台詞を思い出そうとするその悪戦苦闘ぶりも含め、ふたりの一挙手一投足にそこはかとないユーモアが感じられるのだ。なにより、自分で言うのもなんだが、媚びへつらいがない、そこがいい。しかし、映像で見ると、わたしは紛れもない爺だなあ。いや、実際もそうなんだろうが、二週間前にわが家まで子供連れで遊びに来てくれた卒業生たちが声を揃えて、「先生、昔とぜんぜん変わらない!」というものだからすっかりその気になっていて …。舞台上で実像を隠すつもりはないのだが、歩いている時に腰が落ちているのが年齢を感じさせてよろしくない。というか、腰オチは有効に、意識的に使うべきだろう。また、一方の主役ともいうべき<椅子たち>の置き方・並べ方に一工夫の必要あり、ということも映像から分かった。さらには、ふたりの位置関係、距離のとりかたには更なる意識化が必要であることも。

それにしても、便利な世の中になったものだ。映像は丑田がスマホで撮って、それをYouTube化してPCに送ってくれたのだが、それだけでも「ヘー」と驚いたのだが、更に、その映像はわたしと松本くんしか見られないというのだから、いったいなにがどうなっているのか。世の中のネット化、IC・AI化にわたしは批判的だが、しかし、こういう事実を突きつけられると、思わず「う~ん」と唸ってしまう。

 

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