書いてやる! 「鳥の唄 ~家族のしらべ」2019.07.18
今週の稽古は今度の土曜日一回だけなので、台詞覚えの毎日。ようやく全体の半ばまでほぼ暗記。ただ、これまでも繰り返し書いているように、動き、立ち位置等々が曖昧模糊状態の中でいくら台詞を覚えても、それは言うなれば「砂上の楼閣」のようなもの。月曜に丑田から送られてきた先週土曜の稽古の映像を見て、未だしの感、さらに募る。今週土曜の稽古では、丑田にわたしの代役をやってもらい、わたしは演出に専念する予定。これである程度、位置・距離・動き等々を決めることが出来れば、状態グンとupとなるはずだが、はてさて?
ショーケン主演のTVドラマ「君は海を見たか」全11話、見終わる。4回目あたりから回を重ねるごとに面白くなくなる。11回を埋めるために作家も演出家も四苦八苦しているように、わたしの目には映った。例えば、おそらく20歳前後と思われる、ショーケンの友人の妹に、あと2か月で亡くなると医者に宣告された(もちろん当人は知らない)、10歳の息子が初めての恋心を抱き、しかし、あえなく失恋に終わるという切ないエピソードも、妹のキャラが俗っぽ過ぎてどうにも …。この種の枝葉的エピソードが概ねを占める体たらく、もっと、父=ショーケンと息子、それに、亡くなった妻、息子にとっては母代わりをつとめていた伊藤蘭演じるショーケンの妹、この「三人の家族」の心の揺れ動きに焦点を絞った方がよいように思われた。
このような感想はおそらく、この一か月余りの間に見た、傑作ドキュメンタリー群のせいだろう。それは、「シリーズ・移住 50年間の乗船名簿 完全版」、「老いてなお 花となる 俳優・織本順吉92歳 前・後編」「カノン~家族のしらべ」の3本で、いずれもNHK制作の「家族もの」である。「シリーズ・移住 ~」は、50年前に南米行きの船に乗った複数の家族を、10年ごとに計50年にわたって追いかけたもの。まさに「人生、山あり谷あり」という言葉を具体化した作品で、生きる喜びや辛さ苦しさがひしひしと伝わってくる。放映時間・4時間半の稀に見る傑作だ。「~俳優・織本順吉92歳」は、織本氏の娘さんが、老いてなお俳優業をやめない父を2年間にわたって撮ったもの。撮るもの撮られるものがともに家族という、あまり見かけない作品作りの形態が、彼らの関係をあからさまに物語る。泣き叫び怒鳴り散らす父・母を冷静に映しとる娘のカメラ・眼差しが、切なさよりもユーモアを感じさせて、これまた傑作。そして今朝、録画を見た「カノン ~」。子どものいない(出来ない?)夫婦が施設にいた2歳の女の子を養子に迎え、それから15年後。高校生になった女の子と推定年齢50台半ばの夫婦、3人によって構成されている、血のつながりがないにもかかわらず、さしたる問題もなさそうな、フツーの家族の日常描写がしばらく続くが、全体の三分の一に達した頃だろうか、女の子の帰宅時間が連日、夜の12時を過ぎにという、思いもかけない<事件>が起こる。これは後に言葉で語られることだが、そんな娘の許しがたい言動に父の堪忍袋の緒が切れて、「好きにしたければ家を出ていけ!」と宣告、それを受けて娘は家から飛び出し、一か月以上経っても帰ってこないという事態に。どこでどうして暮らしているのかと、わたしも心配していたが、予想した通り、男の部屋に居候していて、妊娠していることが判明。それにももちろん驚くが、さらに驚くのは、相手の男が彼女と同年の、タイ人の父をもつハーフの肉体労働者で、なおかつその父親は、彼が生まれて間もなくタイへ強制送還させられて …、という身の上、ふたりがどこで会い、なぜそういう深い関係に至ったのかは語られないが、さらにさらに驚かされるのは、そんなふたりを、夫婦は優しく受け入れて、男の子も同居させ、そして数か月後にはめでたく男の子が生まれて、5人となった彼らの「家族の絆」は、さらに太く強いものに、という涙なくしては見られないハッピーエンドを迎える。どう考えても、前述の「君は~」や、何回か前に悪態をついた「万引き家族」、同じ監督の「そして父になる」等々の家族モノとは、明らかに一線を画した見事な<家族のドラマ>となっている。
わたしの終了宣言「あと3年あと5本」の中に入れた、「鳥の唄」というタイトルの新作は、10人の家族たちが、互いの内臓交換を繰り返しているうちに、いつしか11人に増えていた、というケッタイな家族モノだが、上記のドキュメンタリー3作を見て、俄然ヤル気が湧いて来た、とりあえず、タイトルは「カノン~」から頂いて、「鳥の唄~家族のしらべ」に変更し。書いてやる!