竹内銃一郎のキノG語録

「活動の記憶」番外編 「バイトの記憶」2020.02.27

「活動の記憶」を書いているうちに、一緒に<活動>をしたメンバーのうち何人かはバイト先で知りあったことを思い出し、ついでだから、経験したバイトのことも書いておこう。

わたしが小・中学生の頃は、同級生の一割くらいは新聞配達や牛乳配達をしていた。わたしは家で時々、お使い、風呂焚き、飯炊きなどをしていたが、この時代の子どもの多くはみな、家事手伝いをしていたはずだ。高校生活が終わって上京するまでの約一ヶ月、父が勤めていた石川紡績(社長は父の姉のご主人)の工場で働いたのが、わたしの初めてのバイト。昼夜二部制で、一緒に働いていた多くは九州方面から来た、当時は「金の卵」と呼ばれていた中卒女子。思い出すのは「こっちで初めて汽車に乗った」と言う、奄美出身の可愛い過ぎる女の子。

大学に入ってからどういうバイトをしたのか、ほとんど覚えていない。しかし、週に三日ほどは大学に行き、学食で昼メシを食べたあとには、講義には出なくとも、必ず「バイトの掲示」を見に行っていたから、月に二、三度は働いていたはずだ。学生時代のバイトで唯一覚えているのは、京都の大掃除。2年の夏、高校の一年後輩の柴部が借りていた部屋に、京都を舞台にしたシナリオを書くため(と称して)、一ヶ月ほど居候していて、彼が入学した同志社の斡旋で、当時は京都に限らずどの地方でもやっていたはずの、「町内一斉大掃除」のお手伝いに行ったのだ。朝の8時ごろに出かけて、昼ご飯、おやつをご馳走になり、それなりのバイト料もいただいて。計3度ほどあちこちの町内に。柴部、いまどこでなにをしてる?

あれはシナ研を<終了>してからだろう、池袋駅東口から徒歩5、6分のところにあった映画館、池袋地球座で結構長くバイトしていた。バイトと正社員合わせて5、6人、チケット売り場、入口でのもぎり、売店での売り子と毎日ローテーションで働いていた。ここで働いていた時には映画館発行のフリーパスがあり、それを持参すれば、池袋の全映画館と新宿の幾つかの映画館はすべてフリーだったから、年間100本以上の映画をタダで見てたはず。ここで一緒に働いていたのが、斜光社の俳優、山口鋭。旗揚げ作品「少年巨人」には、彼の妹さんに出てもらった。<桜を追って~>の撮影のためここを辞め …。

ガラス吹きのバイトを始めたのはいつ頃だろう? そうだ、鈴木くんの最初の映画「黄色い季節風」に出ていた、元・天井桟敷に出ていた某くん(名前失念)に紹介されて、てことは72年になるから、こっちの方が地球座より先になるから、前述の地球座バイトは74年に始めたのだな。う~ん、書いてるといろんな事実がはっきりしてくる。このガラス拭きも楽しかった。日曜日の朝9時ごろ出かけた仕事先の、そんなに大きくはないけれど5、6階はあったはずのビルを三人で仕事し、3時頃に終わってそのビルから外に出、振り返ると、わたしたちが拭いた窓ガラスが太陽の光を浴びてギラギラ光ってた、うん、スカッと気持ちよかった、アレは。このバイトで知り合った小西(泰正)くんは映画カメラマン志望で、「黄色い銃声」のカメラ助手に就き、このあとピンク映画を主としたプロのカメラマンとなる。わたしより5つ6つ若いはずだが、まだ現役でやってるのかな?

「黄色い銃声」の撮影終了後に始めたのが、多分、雑誌「アルバイトニュース」の配達。朝の6~8時に、大宮駅から徒歩10分くらいのところにあった集配所へ行き、そこから、大宮周辺のJR駅構内の各キオスクへ配達するのだが、バイト5人ほどで週ごとに配達先を交替、時には往復3時間ほどかけて、群馬の高崎、栃木の宇都宮、福島の白河駅(!)まで。これらは6時までに行くのが決まりだったが冊数が少なくて運ぶのは楽ちん、ほとんど旅行気分でやっていた。大変だったのは埼京線の大宮から川口区間で、これらは3人ほどで手分けしてやっていたのだが、ひとり分が100冊以上あったのではなかったか。電車に乗ってしまえば、各駅着く毎に冊数は減っていくのだが、100冊以上をバッグに入れて、集配所から大宮駅まで歩いて運ぶのが重くて重くて。でも、こっちは8時から1時間くらいで終わって、それで確か2,500円貰っていたからありがたいバイトだった。数か月後、「日刊ゲンダイ」をお昼過ぎに、埼京線の大宮ー川口駅のキオスクに配達するバイトも始める。こっちは各駅のホームに置かれたヤツを必要部寸に分けて運ぶだけ。二つ合わせても実働2~3時間で5,000円にもなっていたのだ。こんな結構なバイト、いまあるのかな?

キャバレーでレジ・キャッシャーのバイトを始めたのは、いつからだろう? 朝・昼・晩と三つもバイトしていたはずはないから、多分、キャバレーを三ヶ月ほどで辞めてから「日刊ゲンダイ」を始めたのだな。キャバレーの思い出もあるのだが、長くなったからここでおしまい。うん、どれも楽しい思い出しか残っていない。

 

 

 

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