竹内銃一郎のキノG語録

物言わぬ人々 退屈きわまる公演パンフに怒りをこめて2010.09.28

先日、わたしが勤務する大学・専攻の卒業公演があった。その芝居の良し悪しはさておき。 わたしが少なからずショックを受けたのは、当日観客に配布されたパンフレットだ。 若い人の活字離れは言われて久しいが、そのパンフレットには、文章らしきものさえ皆無に近かったのだ。いや、文字はあった。上演された演目が1960年頃ということで、そのころどういう事件があって、なにが流行ってて、登場人物Aは、この年に大学に入学してというような事柄が年表にされていたし、また、出演者の一口コメントなどもそれぞれの顔写真に付されていた。でもでも。年表も一口コメントも、率直に言って、なにも言っていないに等しい。あまり好きな言い方ではないが、残念ながら、この公演・上演に対する熱い思いがなにひとつ伝わってこないのだ。 そして翌日。東京である芝居を見に行ったのだけれど、受付で渡されたパンフレットが、前日の学生たちが作ったパンフレットと誠によく似たものであることに驚いた。 いや、どっちがどっちのパクったとかそんな話じゃありません。「東京」の方は、それなりのプロのデザイナーが作ったもので、凝った作りになっていた、そりゃ500円也の売り物ですもの。でもでも、文章らしきものが皆無であるところはまったく同じで。こっちも活字は一応あったのです。出演女優さんたちのお喋り、男優さんたちのお喋り、そして、演出家と若い彼よりひと世代上の著名人だけれど頭は悪い劇作家・演出家の、これもまあ、どう読んだってなにひとつ面白くないお喋りと。 ひと昔前までよくあった、いや今だって根絶されたわけではない、パンフレット掲載の評論家の駄文など、わざわざ金を払ってまで読みたい客などいないだろう。その判断はおそらく正しい。 だからといって、気のきいたと当人は思っているらしい一口コメントや、有名タレント気取りのお喋りなど、いったい誰が好んで読むのか? むかっ腹が立ったので、芝居が終わって劇場を出るとき、ゴミ箱に捨ててやりました。 そう、この程度のパンフレットを作ってる公演が面白いはずがないわけで。 なんか言うの、面倒臭いわけですか? なにごとかを主張することが怖いわけですか? そういうことを語るのはカッコ悪いと思ってるわけですか? だったらヤメロ、芝居に関わることなんか。自分の部屋で気の合う仲間たちとジャレてれば、それでいいわけでしょ。 もっと手間=エネルギー使えよってそういうことです、早い話が。

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