竹内銃一郎のキノG語録

塞翁が馬? 「人生スイッチ」のあらすじ②2020.05.04

前回の続き。

④「ヒーローになるために」主な舞台:レッカー車管理所(レ管)。設定時間:数か月。主な登場人物:中年の発破技師(ハッパ)、彼の妻・娘、その他大勢。巨大高層ビルの爆破から始まる。後に「ヒーロー」となる男はその種の技術者。帰宅を急ぐ彼の車は渋滞に巻き込まれ。自宅の妻に「少し遅れる」と電話する。今日は娘の誕生日なのだ。途中で車を停め、娘に贈るケーキを買って表に出ると、車がない。駐車違反でレッカーされたのだ。彼はレ管に行き、自分の車は違反区域には停めてないというが、聞き入れられず。数日後(?)、またもや駐車違反とされ、先のレ管に行って抗議するも担当者に冷たくあしらわれ、カッとなって所内で大暴れ。警察に連行されるが、勤務先の口利きによってすぐに釈放される。が、会社は首に。必死に就活をするもうまくいかず、妻には離婚を宣告され、別居。そして、三度目の<不当なる>駐車違反。そして更に四度目の …。ハッパがレ管に来ると、窓越しに彼の車がレッカー車に運ばれてくるのが見える、と、いきなりその車が爆発・炎上! しかし、彼の高度な技術で死傷者ナシ。刑務所行きとなるが、奇跡が起こる! 彼のその行為は、役人=権力への抗議行動だとして世間から賞賛の声が上がり、彼は一躍ヒーローとなる。ラストシーンは、刑務所内での彼のバースディパーティ。笑顔がうずまく中には妻と娘も。めでたしめでたし。

⑤「愚息」舞台:<愚息>の家族が住む豪邸。設定時間:早朝から半日ほど。主な登場人物:愚息の両親、愚息、愚息家の使用人、お抱え弁護士、検事。早朝、両親の寝室に愚息が入って来て、泣きながらひき逃げしてきたことを告白。TVで「妊婦ひき逃げ事件」が報じられている。弁護士と使用人が登場。弁護士は、使用人に報酬100万ドルを渡して、<犯人役>を引き受けてもらうことを提案。取り調べに来た検事はすぐにその嘘を暴くが、弁護士は、使用人=犯人で検事に目をつむってもらうべく交渉。結果、検事には100万ドル、自分にも50万ドルをと伝えるが、父親は、そんな大金を払えるか! 息子=犯人で構わないと怒る。息子もそれをOKするが、弁護士が支払いの全額を100万ドルに下げると、父親はそれを了承。検事は犯人=使用人と表に出るが、表はマスコミ等で溢れていて、それをかきわけ前に進もうとすると、群衆の中から刃物を持った男(亡くなった妊婦の父親もしくは亭主?)が、使用人に飛びかかり …

⑥「Happy Wedding」舞台:豪華な結婚式場。主な登場人物:花嫁・花婿、及び両家の家族・友人等、会場の料理人。多くの参列者で溢れる会場で、賑やかに式が進行していくが、花嫁はふと、ひとりの女性が気になって、携帯を手に取り電話する。と、その女性が電話に。ヤッパリ。以前、電話ががかかってきた花婿の携帯に彼女が出ると、プツンと切れたことがあり、彼女はいまその番号に電話したのだ。ふたりはデキテル! 花嫁は泣きながら会場を駆け抜けビルの屋上へ。そこには休憩中の会場の料理人がいて、泣きじゃくる花嫁をなぐさめる。と、花嫁は感激し彼に熱いキッスを。花嫁を追って花婿が屋上へ来ると、花嫁は料理人とセックス中! 驚き叫ぶ花婿に花嫁は、「あなたと彼女の関係が判った。でも、すぐに離婚はしない、あなたの家の財産をすべいだたくまでは!」と怒りの言葉を投げ返して式場へ。会場に流れる派手な音楽にノッて、花嫁は友人たちと狂ったように踊り、そして、花婿の<彼女>の手をとって踊り、勢い余ってふたりは吹っ飛び、ガラス製のなにかに当たって、ともに血まみれになる。戻って来た花婿はシャンパンの栓を開けると立ったままグイグイとそれを飲み、それから大きなナイフを手に取る。また殺しの場面が? と思いきや、彼はウエディングケーキをそれで切ってむしゃむしゃと食べ、それから花嫁に近づいて彼女の手をとる。花嫁は戸惑いつつもその誘いを受け入れ、抱き合い、そして、参列者たちの目の前でふたりは愛のいとなみを …。めでたしめでたし。

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