竹内銃一郎のキノG語録

思わぬ方向に転がる、話が何度も! 「人生スイッチ」の面白さ2020.05.03

前回触れた「人生スイッチ」、ザクっとひと堀りで終わらせたのはネタバレを躊躇ったからだが、考えてみれば、ストーリーが分かっていたって面白いものは面白いのだ。というわけで、6つの短編の中身をもう少し紹介しておこう。

①「おかえし」舞台:飛行中の機内。主な登場人物:美人のモデル、音楽評論家、モデルの元・彼氏のパイロット(登場しない)。唸る設定:機内の乗客全員は、いま飛行機を操縦している男の復讐の対象であること。そして、ラストシーンで、飛行機が自宅の庭でくつろぐ老夫婦を襲うところから、男の恨みの最大の対象が彼の両親であることが判明するところ。

②「おもてなし」舞台:夜の飲食店内。主な登場人物:30代後半かと思われるウエイトレス(女)、60前後の太ったおばさん調理人(太っちょ)、ヤクザ風の中年男の客(オヤジ)、高校生くらいの彼の息子。客のいない店に来たオヤジは昔、女の父親を自殺に追い込んだ高利貸し(彼は女のことを覚えていない)。それを知った太っちょは、注文された料理に<猫いらず>を入れて彼に食わせてやれば …、と提案するが女は拒否。が、太っちょは女の目を盗んで猫いらずを料理に。しかし、オヤジはそれを食べても平然。と、そこへ息子がやって来る。女は息子に食べさせまいと料理を奪おうとするが、オヤジは女を殴りつける。と、太っちょは持っていた包丁で背後から、オヤジを刺し殺す! 太っちょの名言:仕事をしなくても毎日メシが食える刑務所暮らしは最高だ。

③「パンク」 舞台:昼下がり。山々に囲まれた川にかかった古い橋の前。主な登場人物:高級車(?)に乗ってた中年男(ヒゲ)、小汚い小型トラック(?)に乗ってた太った男(デブ)。ハイウェイを走る二台の車。先でチョロチョロするデブの車を追い抜きざま、ヒゲはデブに罵声を浴びせる。橋の前に来た時、ヒゲの車の前輪がパンクする。ヒゲはその対応に苦慮したが、なんとか前輪をとりつけたところに、デブの車がやってくる。ヒゲは面倒を避けるため車の中に閉じこもる。と、デブは、ヒゲの車のガラスをパイプで叩き(割れない)、それから、車のボンネットに仁王立ちして、なんとウン○をし、さらに、フロントガラスに小便をかける。頭にきたヒゲは自分の車でデブが乗った車を後ろから押しこんで、崖の下に落とす。デブが車から這い出てくるのを確認し、逃げるべく発車させるが、少し走って車を方向転換させる、デブを事故死に見せかけるべく、轢き殺すために。が、な、なんと取り付けた前輪が外れてしまい、彼の車も崖下に。ふたりは崖下で組んずほぐれず。と、ふたりの車が爆発炎上! 話が二転三転するここまでも相当面白いが、最後には思わぬオチが。夕方。事故現場に消防車及びパトカーが集まっている。警察の取り調べ担当が消防担当者に、事故の理由・原因を聞くと、曰く「よくは分からないが、多分、痴情のもつれではないか」と。なぜ、そう思ったのか。ヒゲの黒焦げになった運転席に、ふたりは頬をすり合わせ抱き合っているのだ、黒焦げになって。④⑤⑥は次回に。

 

 

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