竹内銃一郎のキノG語録

待ってます、奇人=貴人のあなた様を。2020.07.15

雨、雨、雨。これまで70年以上も生きてきたが、来る日も来る日もこんなに大雨が降り続いたのは記憶にない。京都に引越して6年半。この間、もちろん例外はあるが、週に50キロのウォーキングを自らに課し、コロナ感染にもめげずそれを果敢に(?)実行してきたが、降り続く雨のせいでこの2週間はそれが叶わず。お陰で、下半身が少々だぶついてきたような …?

雨が降りやんだ昨日の3時過ぎ、約一年ぶりに京橋に行く。1月に上演する芝居に出演してくれる女子と初対面。約2時間のうちの100分ほどはわたしの独演会となった。考えてみれば、5月半ば以降、ひとと会って話したことなど数えるほどしかないのだ。6月初めの、予定していた6月公演が延期になったので、スタッフ・キャストと催した「残念会」、三条にある「喫茶 直」のマスターと3度、散髪屋でのお喋り名人と2度、それに、仕事で京都に来ていた柄本さんと会ったのと、今月初めに、戯曲集作成の件で小堀さんと会って、その後、知人から来年6月公演出演の推薦があったMさん、これだけである。だから、昨日はあんなにペラペラ喋りが止まらなくなったのだろう、普段は無口なわたしなのに(?)。

用件を果たして6時半頃、帰りの電車に乗るべく京阪京橋駅に行って、思わぬ光景を目の当たりにして驚く。特急が止まる3階・ホームまで行くためのエスカレーターに、ひとが二列、隙間なく乗っているのだ。到着したホームにも当然のようにひとが溢れていて、スーパーやコンビニ等では、他の客と1~2メートルは距離をとって …なんてお札が出ているのに、こっちは10センチの隙間もないほど。想像も出来なかった<恐怖の現実>を目にしたわたしは、慌ててポケットに入れていたマスクを取り出して …。車内はエスカレーターやホームの状態をはるかに上回る、ミリ単位の身動きも困難な三密状態。大丈夫か? コロナ感染!。

京阪京橋駅からわたしの最寄り駅である七条駅まで、特急で35分。去年の公演の稽古の時に通っていた頃と変わらず、枚方駅で半分ほどの乗客が降りたので、それからの15~20分ほどは皆、他の乗客とはそれなりの距離をとって座ることが出来たのだが、しかし。よくよく考えると、OL・サラリーマンの大半は、週に5、6日の朝晩、合わせて1~2時間は、居酒屋等など問題にならないほどの<超三密>状態に置かれているのだ。大阪ー京都がこの程度なら、東京を核とした首都圏のサラリーマン諸君は毎日朝晩、地獄の底で呼吸していることになる。絶えることなく危険にさらされている首都圏のサラリーマン諸兄は、少なめに見積もっても数百万人はいるはずである。だから、フツーに考えれば、ニューヨーク等のように、首都圏で一日万単位の感染者が出てもおかしくないのに、なぜ百単位で収まってンの? 分らん。マスクが効いてる? だからァ。目にも見えないウィルスからの攻撃を完璧に守ってくれるようなマスクを付けたら殆どの人は、1分も経たないうちに呼吸困難に陥ってしまうんだって。

それにしても。わたしのように、もうしばらく芝居を続けたいと思っている輩にとって、東京の小劇場で起こった「コロナ感染」は、いかにも痛い、痛すぎる。わたし達の1月公演のお客さま、ひょっとしたら合計が3桁にさえ届かないのでは? このような状況下であるにもかかわらず、劇場に足を運んでいただける方々には感謝をしつつ、毒に当たる危険を承知の上で、美味しいからとふぐの肝を好んで食べたと言われる某歌舞伎役者同様の、高位の奇人=貴人と呼ぶにふさわしい方々としてわたくし、褒めたたえるでありましょう。

 

一覧