竹内銃一郎のキノG語録

わたしのお回顧様 2020② 股ぐらに巻き込む布団眠れぬ夜 by風天2020.12.31

昨日の夜の天気予報では、深夜から明け方、あるいはお昼ごろまで雪が降るとのことであったが、2、3度短時間にホロホロと降っただけ。ほんとに天気予報は、わたしの競馬予想同様、当たらない。

ここに来ての新型コロナ感染の患者数が急角度で上昇、東京では本日とうとうドーンと1,000人を超えたようだ。どこまで続くぬかるみぞ。当然のことながら人々の不安はいや増し、来年は1月と6月、二度あるキノG‐7の公演も、コロナが観劇を予定していたお客たちを足止めするのではと考えると、さすがのわたしも少なからず気が滅入る今日この頃である。

さて、例年の「お回顧様」同様、今年見た映画のことを以下につらつら。ツイッターには今年のベスト3として、「パラサイト 半地下の家族」(監督ポン・ジュノ)「歓びのトスカーナ」(監督P・ピルツィ)「メランコリック」(監督田中征爾)を挙げたが、このブログに感想文を書いた「家へ帰ろう」(監督P・ソラルス)、「デッド・ドント・ダイ」(監督J・ジャームッシュ)、「リード・マイ・リップス」(監督J・オーディアール)、「アマンダと僕」(監督M・アース)、「荒野にて」(監督A・ヘイ)、「恋の豚 むっちり濡らして」(監督城定秀夫)も忘れられない佳作だった。驚いたのは、C・イーストウッドの新作「リチャード・ジュエル」。御年90歳の監督作品だと思うと、ほとんど奇跡的とも言える傑作であった。「こいつは上手い」と思った弁護士役のサム・ロックウェル。ウィキで調べたら、「スリー・ビルボード」で暴力警官を演じたとあり、確かにあの役も …と思い出す。この種のインテリ役&殺し屋そこのけ役、どちらもOKなんて俳優、日本には何人もいないな、きっと。残念だったというか、かなりの苛立ちを覚えたのは、X・ドランの新作「ジョン・F・ドノバンの生と死」「スティアス&マキシム」だ。自己愛が強すぎて。自分自身を近しい他人くらいの距離で見たらいいのに。ドラン同様、わたしの現役映画監督ベスト10に入っているP・アルモドバルの新作「ペイン・アンド・グローリー」もイマイチ。同監督の作品で今年初見の「ハイヒール」「トーク・トゥ・ハー」と比べると、ずいぶん開きが。とりわけ、「トーク・トゥ・ハー」は、この映画のサントラをわたくし演出の芝居で何度か使用したこともあり、長く見たいと思っていた作品で、その期待に違わぬ傑作! たまたまピナ・バウシュの公演を隣席で見たふたりの男と、それぞれが恋したふたりの女性との切な過ぎるふたつの恋愛の顛末を描いているのだが、少なからずの無理がある筋立てにもかかわらず、それがかえって上級のリアリティを感じさせるのは、現実は思うようにはならないという紛れもない事実があるからだ。素晴らしいシナリオである。出演場面の大半を病室のベッドに全裸で横たわって過ごす(?)レオノール・ワトリングも大好きで❤

あ、そうだ。今回のタイトルにある「風天」とは渥美清の俳号です。2020年があと一時間弱で終わろうとしている。コロナちゃん、お願いだから早くおやすみになって。

 

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