竹内銃一郎のキノG語録

感激の観劇を、ヨロシク。2021.01.09

昨日の夕方、稽古場に出かける前の5時ごろ、喫煙すべく住まいのベランダに出ると、東の山々の上を細い雲がまるで水平線を描くように浮かんでいて、その上に、孫悟空が乗るきんとん雲のような一切れの雲があり、西方を見ると、夕焼けに染められた金色にも見える雲がいくつも浮かんでいて、しばしそれらを代わる代わる眺めて陶然としていた。それは、毎日のように東北北陸の各地を襲っているドカ雪の恐怖、そして、全国いや世界中で猛威を振るっている新型コロナ感染の驚異とはまさに対極にある、まるで夢のような絶景であった。

本日の稽古は15時~19時。5日には岡田さんが、6日には高阪が、ともに体調不良を訴えて稽古を休み、まさかコロナでは? とわたしの頭の中に暗雲が漂ったのだが、それぞれ翌日には稽古場に来て、それまでとさほど変わらぬ元気さで稽古に参加し、やれやれと胸を撫でおろしたら、8日に大阪・兵庫・京都にも首都圏同様の緊急事態宣言をというマスコミの声が高まって。劇場が閉鎖されるのではないか、稽古場の京都芸術センターは公共の施設だから、20時以降の使用は出来なくなるかも? などという意見が飛び交い、頭の中で漂っていた暗雲が鼻の根っこにとりついて、わたしは思わず呼吸困難に! というのはもちろん冗談ですが、とにかくまともに稽古・公演が出来ればいいがと不安におののいていたら、とりあえず今日現在に入ってきている情報によれば、客席制限がなされるかもしれないが、公演は出来るとのこと。しかし、公演は可能でも …

まともに(?)お客が集まるかというと不安が。ツイッターにも書いたのだが、ここにきてチケット予約のキャンセルが相次いでいて、お昼2時の公演はまだしも、7時からの夜公演は恐ろしいほど予約数が少なく、これは明らかに、多くの生真面目なひとは「コロナ感染対策」に殉じているからだろう。どげんすればよかと? 皆さ~ん、「さいごのきゅうか」はかなり面白い芝居になってますよ~。コロナ感染が怖い? 大丈夫じゃないですか? だって、客席ガラガラで三密とは縁遠い安全地帯になるはずなんですから。

不安におののくわたしのところへ、7日の早朝、励ましの文言が届く。今年の4月から半年ごとに刊行される、わたしの戯曲集のひとつ「耳ノ鍵」(「Moon guitar」「満ちる」「マダラ姫」「少年巨人」所収)の解説文を依頼した土橋(淳志)くんの原稿である。わたしの演劇人生はすでに40年を数年超えているが、これほど密で刺激を受けた批評は初めてである。感激! そうだ、皆さんも「さいごのきゅうか」を観劇して感激し、元気をもらって下さい。ヨロシク。

 

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