竹内銃一郎のキノG語録

「家族」を持ち込むな。リングも球場も戦場でしょ。2010.10.28

今週月曜のスポーツ紙に、タイトルマッチで勝ったボクサー西岡の、リング上で愛娘を抱いてる写真が載っていた。ケッ! とわたしは思った。
現東京都知事が若かりし頃に発表した小説「太陽の季節」は、登場する若者たちの反社会的な行動の描写、とりわけ、そのあらわな性描写が当時の世の大人たちの眉をひそめさせたのだった。
わたしがそれを読んだのは、発表されて多分10年後くらいだろう。学生のときだ。もっとも印象に残ったのは、先に記した性描写ではなく、小説の最後の(多分)、憧れていたボクサーがわが子を抱いてる写真を見て、主人公が幻滅する件だった。英雄に家族なんかいたらダメなのだ。少なくとも見せてはいけない。そういうことです。
そのこととは別に。リングは戦場だ。戦いが終わったあととはいえ、そんなところに家族を、わたくしごとを、持ち込んでいいものかどうか。わたしにはきわめて非常識なことのように思える。というより、それはリング・ボクシングを軽んずる行為ではないだろうか。亀田のように歌を歌うなんて論外だ。そんなことがファンサービスになると思っているのだろうか。
プロ野球の始球式にアイドルが登場するとか。
なんだろう、ほんとに。一方で過剰にスポーツ選手を持ち上げ、一方で、そのスポーツを軽んじているとしか思えない「演出」をする人々 ……

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