竹内銃一郎のキノG語録

出来立てホヤホヤのような瑞々しさ 「ダウンタウン物語」を見る2014.10.21

中川さんショックいまだ尾をひく状態だが、食欲はフツーにある。幸か不幸か、こんなに長く生きているのに、食べ物が喉を通らないなどという状態を一度も経験したことがない。どこか壊れているのだろうか?

そうだ、これを書いておかねば。A級MissngLinnkの「M00n gitar」の公演が間近に迫っています。23日が初日。25日(土)の夜の部終了後のアフタートークには、わたくしめも登場致します。お時間あれば是非ご来場下さい。

 

「ダウンタウン物語」(監督アラン・パーカー)を見る。傑作という評判のみ知っていて、今回が初見。まさかこんな映画だったとは! 出演者全員子ども。でも登場人物は全員大人。つまり子どもが大人を演じるのだ、それもギャングだの酒場で歌い踊る女たちを。そして、ミュージカル! 歌は大人が吹替えで歌っているのだが。子どもが歌うには難しいのかな?

ストーリーはよくあるギャング映画をなぞっている。縄張りをめぐって対立する2組のギャング団の抗争を軸に、ギャングではないけれどその周辺にいる男と、歌手・映画スターを夢見る女の子の恋の行方がサブストーリー。

登場人物も、これまたギャング映画ではお馴染みの、太っちょの異名をとるボス、彼の妖艶な愛人、知的だが冷徹なもう一方のボス、等々。そう、ベビーフェイスとみんなに呼ばれる男を、ほんとに小さな男の子が演じているのには笑った。   ギャング映画を子どもでというアイデアは秀逸というほかないが、それだけで終わらせないのがアラン・パーカーだ。映画の冒頭、H・ホークスの傑作「暗黒街の顔役」ばりに、ひとりの男が何十発の弾丸を浴びて殺されるのだが、しかし、わたしたちが実際に目にするものは、赤く血まみれになった姿ではなく、彼はホイップされた白い生クリームまみれになっているのだ。 あるいは。当然のようにギャングたちは頻繁に車を使うのだが、その車は、運転手が足でペダルを踏んで走らせるもの。それでちゃんと(?)スリリングなカーチェイスもやる。こういったギャグを随所に入れて笑わせるのだが、というか、子どもが大人の真似をするだけで、そうはもうギャグ以外ではないのだが、しかし、あくまでもこれは本格的(!)ギャング映画なのだ。この、基本的にはふざけた設定をマジメにやるセンスが素晴らしい。

何度か挿入される歌・踊りもいい。 太っちょボスの組が、壊滅状態に追い込まれ、主人公に助けを求める。逆転するには、敵が所有する強力きわまりない武器、漆喰製のマシンガンを強奪しなければいけない。しかし、そうするにはあまりに人手が足りない。そこで、ホームレス達に援軍を頼む。最初は渋る彼等だったが、主人公の必死の説得が功をそうして、いざ行かんという時の、みんなでステップを踏みながら歌う歌がとりわけ素晴らしい。 最後は、ふたつの組の激しい銃撃戦になるのだが、ここでも見せる。

銃撃戦はいつしか、ローレル・ハーディの映画みたいに、敵味方関係ない、無茶苦茶なパイ投げ合戦になるのだ。なんて秀逸なアイデア! そしてこの映画にも、「舞妓はレディ」「ジャージーボーイズ」と同じように、感動的なフィナーレが用意されている。

公開は1976年というから、今からおよそ40年前。にもかかわらず、出来立てホヤホヤの瑞々しさだ。

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