竹内銃一郎のキノG語録

時には台詞をうたうことも必要。  「花ノ紋」演出の指針③2017.11.12

以下は、出演者に送ったメールの一部です。

11.11の稽古

「Moon guitar」
前回に比べると、やりとりの流れがスムーズになっています。さらに高見を目指すとするなら、そのスムーズな流れに掉さすノイズ的なものが必要、ということになりますが。
以下、細部について。
P14 あんな:ああ、そうそう~
もう少し詰めて、素早く。
P15 あんな:自分は自分からいちばん~
片言からスムーズな物言いに代わるキッカケの仕種を。髪をかき上げるとか、座り直すとか、譜面台の高さを変えるとか。観客にどうこうというより、スイッチの切り替えを自分ではっきり確認できる仕種を。
P17 ふたりのすれ違い
もっと至近距離で止まる。位置を確定する。
P18 タクミのリュウへの挨拶
単純に、もう少し声のヴォリュームを上げる。知人ではないが一応顔見知りのひとにする、フツーの挨拶を。
あんな、「どうして?」「テレビ?」「嘘、どこに?」もう少し驚いて。

「風立ちぬ」
冒頭の松男とさきのやりとり
さきが新聞を読み、その傍らで松男がビールを飲む。それだけを取り出せば日常的に過ぎる光景ですが、さきの結婚式という、非日常的な<行事>の前日の夜であることが重要です。緊張というほどではないにしても、なんとなくそわそわして、いまのこの時間をどう過ごすべきかが分からず、だから新聞を読み、ビールを飲む、そんな日常の行為をあえて選ぶ、と。松男の「ああ、うまい~」の台詞を不必要に大きく、と言ったのは上記の観点からで、即ち、大きな声を出して自分を落ち着かせる、緊張を解きほぐす、という ことなのです。
松男の長台詞
さきに語り掛けている部分、自分自身に確認を取っている部分、さきと自分自身両方に語り掛けている部分。言葉を投げかけている対象をその都度意識して下さい。これは、あまり雄弁な語りにしないための方法ですが、もうひとつ、自分の言葉に頷いたり、あるいは、ちょっと照れて頭をかいたり、という仕種を一回二回入れたら同様の効果が。
三原山及びさきの長台詞
稽古終了後にもお話ししましたが。上記の松男の台詞は自分の現在の思いを述べるものですが、こちらは違います。どこかフィクショナルな匂いがあります。七五調風になっているのはそのためで。どこでどの程度の長さの間を取れば、あるいは、どこをどう詰めれば、聞き手(話す当人も)が心地よく感じられる調子になるのか。緩急も必要。
P22 三原山:なぜ?
早い。考えても分からないので、質問をする。(続く)

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