竹内銃一郎のキノG語録

「花ノ紋」解題3  Moon Guitar2017.11.21

【登場人物】

角中タクミ (ギター職人。体調不安を抱えている)    あずさ (タクミの妻。栄養士。現在妊娠5ヶ月)
松本カイジ (あずさの兄。角中家の居候。ただいま求職中)  納富 (あずさの高校時代の同級生。銀行員)
マオ(本名・富岡タケオ。旅行会社経営。残留孤児二世) 張 あんな (マオの秘書。リュウの愛人)
リュウ(夜の実業家。年齢・経歴なにもかも不詳の謎の中国人)

plot  9つのシーンより成る。

S1)マオのオフィス 夕方。勤務時間を過ぎたから帰ると言うあんなに、「ひとりになると涙が出るのよ」と古い歌謡曲を歌ってひきとめるマオ。リュウから電話。通話を終えてマオは「なにか俺に頼みごとがあるのか?」「あ、忘れてた」とあんなは言い、「堅気で、口が堅くて、男気があって、金に困ってる男、誰か知らない?」と。リュウは素人の殺し屋を探しているのだ。あんなが帰ってひとりになったマオ、窓越しにUFOを発見す。

S2)タクミの自宅 昼下がり。高校時代、あずさが付き合っていた納富が訪ねてくる。久しぶりの再会。会話が弾んだその先、納富はいまでも変わらずきみが好きだと告白する。ふたりのやりとりを盗み聞きしていたカイジが、素知らぬ顔で登場。玄関に来客。マオが現れる。月琴の修理を頼みに来たのだ。あずさは近所の鍼灸院に行っているタクミを呼びに行く。納富、帰る。タクミ、現れる。マオが差し出した名刺を見て、タクミは、月琴の修理は、いま忙しくお引き受けできないと答える。明らかに、闇社会に生きるマオと関りを持ちたくないという態度。マオ「あなたは自分と同じ味がする」タクミ「同じ味?」「知人の中国人が、同じ匂いというところを間違えて味と。でも、それが気に入って …」。タクミ、テーブルの上にあったお手製のけん玉をマオが気に入った風なので、プレゼントする。マオ、それを受け取り、月琴を置いて去る。

S3) タクミの自宅 前シーンの数日後。あんながタクミを訪ねてきている。月琴修理の念押しに。やってくれたらいい病院を紹介するからと、マオからの伝言を伝える。マオはこの間、カイジからタクミの体の不調のことを聞いたのだ。夜。あんなから電話。仕事を依頼したいのでオフィスに来てほしい、と。

S4)マオのオフィス 前シーンの数日後の夜。タクミがひとりで待ってるところに、リュウが椅子を持って現れ、二言三言会話を交わし、椅子を置いて去る。タクミはリュウが何者であるかは知らない。マオが現れる。タクミが贈ったけん玉にマオは夢中であることを伝え、去る。あんなが現れる。殺しの依頼をする。当然のようにタクミは断るが、成功報酬1千万という提示に、心が動く。自分が病気で死んだあとの家族の生活不安を考えたのだ。タクミは、あんなから殺しの手順を伝授される。帰ろうとするとリュウが登場。タクミが帰ったあと、あんなはリュウに「いつもの麦秋ごっこ」をしようと提案。小津安二郎の「麦秋」のワンシーンをふたりで演じる。

S5)タクミの自宅  前シーンから数日後の深夜。あずさとカイジ。あずさはなにか苛々している。なぜかと問うカイジに自分でも分からない、とあずさは答える。タクミ、帰ってくる。カイジ、仕事で忙しいのかもしれないが、妊娠5ヶ月のあずさのことももう少し気にかけてくれと頼む。分かりましたと、寝室へ。ソファで眠っているカイジのところにあずさ現れ、納富と性的関係を持ったことを告げる。寝室でタクミ、あんなに殺しの成功を電話連絡する。(続く)

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