竹内銃一郎のキノG語録

そのシンプルな断言が堪らない 早川義夫の歌2011.09.03

音楽を聴く習慣はない。
若い頃、大和屋さんに「竹内くんのホンには詩はあるけど、音楽がないね」と言われたことが、忘れられない。
そんな音痴なわたしがもっとも衝撃を受けた曲のひとつが、ジャックスの「からっぽの世界」だ。
高校生だったのか、もう大学に入っていたのか。ラジオの深夜放送で聴いたのだった。それは
ぼく死んじゃったのかな
という歌詞から始まる。
衝撃の度合いで言うと、明らかに、ビートルズの「プリーズプリーズ ミイ」を最初に聴いた時よりも大きく、前に書いた、小学5年の時、同級生の女の子が歌ってた「花笠道中」と同じくらい。ま、この二つを並べるところが、竹内ならではなわけですが。
この「からっぽの世界」を歌っていたのが(作詞作曲も[e:3])今回の芝居の挿入歌として、「赤いワンピース」を使用することを快諾してくれた早川義夫さん。
早川氏は多分わたしと同年輩だと思いますが、やはり同年輩で、なおかつ高校時に名を馳せた映画監督に原正孝(現 将人)がいて、この若き天才ふたりがタッグを組んで、音楽映画を作り、なおかつ、二人とも20代半ばで創作活動をやめてしまって……
そんじょそこらの凡才に過ぎないわたしから見ると、あれもこれも敵わん、とため息をつくほかないひと(達)なんですねえ……
10年ほど前、原は自身初めての商業映画「20世紀ノスタルジア」で、またまたわたしの度肝を抜き、早川氏も10年以上のブランク(多分)を経てカムバックする、と。
紳助引退に関するコメントを求められたさんまが「俺だって毎日やめようかと思ってる」と答えたらしいが、これは冗談ではないだろう。
わたしも芝居を始めた時から、いつやめよう[e:3]と毎日考えていた。
なぜ[e:3]理由はひとつや二つではないが、ナーンも考えてない連中に、面白いの面白くないのと、シタリ顔で言われるのが、我慢出来なかったのも理由のひとつ。
いい人はいいね 素直でいいね
これは早川氏の「この世で一番キレイなもの」の一節。
長いブランクがあったがそれが可能にした、このシンプルな断言、とわたしは了解し、感動するのですが。
と、ここまで書いて、この歌のことは前にも書いたことがあるような気が…
ま、いいでしょ。
それにしても、早川さん、いい人。
芝居、頑張ラネバ。

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