女も殺した、子どもも殺した …イーストウッドの「許されざる者」はやっぱり凄い 2010.06.03
映画「許されざる者」を久しぶりに見る。改めて再確認したのは、シナリオの素晴らしさ。とりわけ人物配置の見事さはシナリオ作りのお手本だ。仲間が受けた暴行の報復のために、その犯人の殺し屋を求めている娼婦たち。その依頼を受けて、犯人を追う賞金稼ぎの三人組。そして、犯人たちのグループと町の秩序を守るため、殺しを阻止しようとする保安官グループ。三角関係は物語の基本なのだ。
マキノ雅弘だか、彼のお父さんのマキノ省三の言葉だか、映画は「イチスジ、ニヌケ、サンヤクシャ」だと言う。即ち、映画で一番重要なのはスジ=台本で、二番目がヌケ=カメラ、役者は三番目、という意味である。もちろん、カメラもいい。技術的なことは分からないが、暗いシーンがこの映画の中で有効に機能していることは、素人でも分かる。
話は唐突に変わる。鳩山が民主党の代表を辞めるという。なんで? と思う。誰もが言ってるように、毎年首相が変わるというのはいくらなんでもひどすぎやしないか。飽きもせず持ち上げては引きずり落とし、持ち上げては引きずり落としを繰り返す、マスコミとそれに乗っかる多くの人々。マスコミはよく、国の方針を示せなどというけれど、鳩山は、「じゃ、あんたたち、どういう国でありたいと望んでいるの?」と、首相の座に居座って、国民に問い返せばいいのだ。いったいこの国のどれだけの人間が、そんな夢を哲学を語ることが出来るだろう?
結局のところ、マスコミの首相批判・権力批判は、テレビ・雑誌・新聞の視聴率・売り上げを上げるためなのではないか、と思う。こんどの政権は期待できそうというチョウチン記事で何ヶ月かを持たせ、頃合を見計らって、コキ降ろす方に回り、政権交代にまで追い込めば、その前後の視聴率・売り上げは大いに伸びると、こういう計算だ。
「女も殺した、子どもも殺した、動物も殺した、動くものならなんでも殺した」というのは、「許されざる者」の中で主役を演じるC・イーストウッドの、忘れられない名台詞。いつも正義の味方面して偉そうに語っちゃってる古館伊知郎に、これ、ぶつけてやりたいものです。