竹内銃一郎のキノG語録

「無茶苦茶や!」な世界が踊る? 「風立ちぬ」改訂終わる。2015.03.10

先週末は。金曜に学生達の芝居を見に行き、日曜は卒業生の小山さんの結婚式に出席というわけで、このところ日課になりつつあるジョギング(とは名ばかりの)が出来ず、週があけたら再開するぞと思っていたら、昨日は雨降り、今日は2時頃、窓からは青空が見え、勇んで外へ出たらこれが。風が強く冷たく、「滅茶苦茶や」な寒さ。すぐさま部屋にとって返して、少しだけ残っていた「風立ちぬ」の改訂を仕上げる。その登場人物表と冒頭部分を以下に。

【登場人物】

吉野松男 (三原山こと小川錦一の幼馴染)

ともの(松男の妻)

さき (松男の妹)

まりえ(松男の娘)

宝木陽之助(散髪屋)

照子 (陽之助の妻)

岩村幸雄 (さきの婚約者)

あき (幸雄の母)

北島俊介 (まりえのボイーフレンド)

殿山   (写真屋)

坂口みすず(松男が所有するアパートの店子)

小野寺園子(高校教師 幸雄の昔の恋人)

石松   (宝木の助手)

三原山  (元・相撲取り さきの命の恩人)

吉野家の庭。下手寄りに、下から1・5米くらいのところで切り落とされた木が一本。庭を囲む垣根には白い花が咲いていて、中央あたりに庭木戸がある。庭をのぞむ座敷は縁側に囲まれていて、奥に二階への階段が見える。初夏の午後三時ころ。縁側に松男と宝木。

松男  田舎って?

宝木  葉猥。

松男  ハワイ?

宝木  こっち(フラダンスの手真似)のハワイじゃなくて、男鹿半島の先にあるのよ、「はわい」って町が。ほら、UFOで有名な

松男  知らない。

 

この作品は、東京乾電池に書き下ろしたもので、ほとんどがあてがき。初演は1998年。内容は、長谷川伸の「一本刀土俵入り」「瞼の母」「関の弥太っぺ」の設定からいくつか借用し、上記の舞台装置は、山下耕作が撮った「関の~」の旅籠吉野家の庭をモデルとしている。因みに、柄本(明)さんが演じた三原山の本名小川錦一は、先の映画で弥太っぺを演じた中村錦之助の本名。要するに、乾電池の俳優諸兄と映画「関の弥太っぺ」へのオマージュ的な作品と言っていいか、と。

広岡(由里子)さんが演じたさきの結婚式の、前日と当日に巻き起こるてんやわんやが描かれているのだが、そのてんやわんやの果てに原爆(らしき爆弾)が落ちる、と。時代設定は、これが書かれた頃としたのだが、二日目は戦争が始まっているということになっているので、半分くらいの観客は太平洋戦争が始まった頃の話だと勘違いしたようだ。コノ国が戦争なんかするわけないと思ってるからピンとこないのですね、多分。「ハシリュウもバカじゃないから」なんて台詞もあるのに。あ、ハシリュウとは当時の首相橋本龍太郎のことです。

三原山が20年前に川で溺れていたさきを助け、命の恩人である彼のことをさきは今でも忘れられないという設定は、「関の弥太っぺ」から、主人公が相撲取り崩れというのは「一本刀~」から、三原山が死んだことになってるというのは「瞼の母」からのイタダキだ。こういう大衆演劇風の、涙なくしては語れない話の腰をポキポキ折るのは、ベンガルさんが演じた宝木で、彼は、奥さんはロボットだと広言するような、当人でさえ嘘とほんとの区別がつかない、原爆にも負けない「滅茶苦茶や!」な男。

奇しくも? 昨日見た「グランド・ブタペスト・ホテル」も途中から戦時下になる。このわなわなと震えるほどの感動を与えられた、「滅茶苦茶や!」な傑作については次回に。

「風立ちぬ」をお読みになりたい方は、「リクエスト」まで。

あ、連発しました、「滅茶苦茶や!」は、先々週放映の「アメトーク ダチョウ倶楽部を考えよう」の番組終わりで、上島竜平が繰り返していたギャク(?)。おかしな関西なまりに、笑ったァ。

 

 

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