夢にはオチがない 「グランド・ブダペスト・ホテル」を始める前に2015.03.12
杉花粉飛び交う、たまらない季節の到来。日中は、目のかゆみ、鼻水、くしゃみに悩まされ、夜は鼻づまりで苦しく、なかなか寝つけない。おまけに、この2、3日は風邪をひいたのか咳もとまらず。ということもあって、よく夢を見る。今朝の明け方に見たのは、こんな夢だった。
松岡ナントカがボーカル担当のナントカってバンドのコンサートにわたしは出かけている。名前もよく知らないくらいだから、彼と彼のバンドにはなんの関心もないのだが、どういうわけだかそういうことになってる。
わたしが会場に入った時にはまだリハーサル中で、松岡某は、アニメの主題歌風の歌を歌っていた。周りには若い子たちがいて、ノリノリ。バカの集まりかと思っていると、いつの間にか、本番ということに。1曲目が瞬く間に終わり、2曲目。さっきのリハーサルでは、松岡某が歌おうとすると、袖から「ちょっとちょっと」といいながら男が出てきて、ふたりで小芝居をしてそのあと歌が始まるという、面白かろうはずもない段取りになっていた。で、やっぱり袖から男が登場。しかし、なにも言わずにモジモジしている。台詞が飛んでしまったようだ。男はいたたまれず袖に引っ込む。が、すぐに戻ってくるかと思いきや、なかなか登場しない。わたしは付き合ってられないと思って、会場を出る。守衛室みたいなところを通り過ぎたとき、待てよとわたしは思う。このまま帰ったら、ヤラズボッタクリではないか。入場料を返すよう、守衛にかけあってみようと思ったのだ。わたしの、こうこうだから金を返せという要求に、相手はなんとも要領をえないナマクラな返事を返すのみ。わたしは相当苛立って、声も大きくなったのだろう、それを聞きつけて奥からふたりの守衛が現れる。3人のオッサン相手に、ああだこうだとやりとりしているうちに、妙なことに気づく。守衛と見た彼等は、人間ではなく山芋・長芋の類ではないか、と。体のラインが奇妙な曲線を描いていて、顔色が変に白く、ポツポツと長い髭も生えている。声がヌルヌルしていて、手ごたえがないのに粘っこく、決して分かったと言わないのは、だからなのだ。その事実を突き止めたわたしは、彼等を赦すわけにはいかないと、ますますいきり立つ。そう。わたしは生まれてこの方、ヌルヌル・ネバネバ系の食べ物が大嫌いなのだ。それで? 夢にはオチがありません。多分、うやむやのうちに目が覚めた、と。
ウェス・アンダーソンの「グランド・ブダペスト・ホテル」は完璧だ。まるで、わたしのために、わたしの誂えに応じて作られたような映画。わたしが好きなもの、映画に求める要素がすべて詰まっている。それは、荒唐無稽な世界であり、スラプスティックなギャグが満載されており、スピーディな展開、色彩が見事で、音楽も素晴らしく、チャーミングな女の子のチャーミングな恋愛があり、執拗でナンセンスな追っかけ、飛躍と逸脱、サスペンスフルな謎解き、凸凹コンビの活躍、機知にとんだ台詞のやりとりと詩的なモノローグ、色と欲、暴力、戦争、クール&ドライとホット&ウエットの割合(8対1くらい)等々。
とにかくわたし好みが全部トッピングされていて、でもそれらが「全然ケンカしてない」。まさに、二重の意味でこれは「夢のような映画」なのだ。というわけで、その具体については次回に。